隣の席の魔法使い。
「……っ。優香ちゃんのこと大切なんだね。今日もずっと優香ちゃんのこと気にかけてたでしょ」
そんな俺の答えに対して何故か辛そうに飯塚は笑った。
大切……か。
「アイツ、境遇が境遇なだけにいろいろ欠けているとこあるだろ?だからこれからは俺がその欠けている部分を埋めていきたいんだ。西島が憧れている〝普通〟って奴に少しでも近づけるように。今日はその1つだったんだよ」
西島にとって初めてだった遊園地。
西島から初めてだと聞いた時から西島が普通の人と同じように楽しい思い出ができるよう、俺は努めようと思っていた。
「…………私だって魔法使いだよ?」
飯塚の小さな声が耳に入る。
「私だって辛い思いたくさんしてきたよ!?心が読めるだけでたくさんの人に嫌われて避けられて時には怖がられてきたよ!?」
そして声は次第に大きくなり最後には泣きそうな声で飯塚は叫んでいた。
「私だって欠けているよ」
飯塚がそう言って俺の腕に触れる。