恋の仕方が分かりません。
プロローグ
「前野ちゃん、休憩入っていいよ」
「はーい。ありがとうございます」
私、前野遥希(まえのはるき)は大通りから少しはずれた小さな商店街に並ぶ本屋さんでアルバイトをしている。
高校2年生から始めて今日で丸5年。
客観的に見てもどこのお店よりも比較的人気だと思う。
特にこの7月の終わりには外の暑さから逃れたい人たちが、涼しくて暇がつぶせる場所としてやってくることもある。
ほぼ地元の人達しか来ない所だけど、ピーク時のレジには店内に長い行列ができるので合間を見て毎回店長が声をかけてくれるのだ。
今日は11:15か。
ガチャッ
「あ!おつかれさまです」
休憩室に入って声をかけてくれたのは4月に入ったばかりの新人ちゃん。
「おつかれさま。今日は私服なんだね〜」
「夏休みなんで!」
ニヒヒと笑いながら、エプロンの紐を結んでいる。
「ふふ、嬉しそう」
「えーやっぱり分かります?聞いてくれます?聞いてくださいよー」
「う、うん」
「今日バイト終わったら彼氏の家に泊まりに行くんですよ」
キャーっと両手を頬に当てて体を揺らしてる姿はとても可愛い。
「今日はずっとにやけちゃうかも」
「楽しく接客できそうだね」
こんなに喜んでもらえるなんて彼氏も嬉しいだろうな。
私も釣られてにやけそう。
「あ!そういえば前野さんは彼氏は?」
「えっ?!」
突然振られた質問に思わず大きい声が出てしまった。
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