フィンガーマン
それからは手分けして名簿の番号に片っ端から電話をかけていった。
森の悪知恵で名簿の中の名前を語り、同級生のふりをして植野菜摘の話題を振る。
この繰り返しだった。

電話が通じない人もいたが連絡が取れた人もいた。
そんな中で気になる話があった。
植野菜摘と仲が良かったという柿崎理沙の証言だ。

当時よく菜摘のことを遠くから見ている男が居たらしい。
「確か、隣のクラスの杉田なんとかって名前だった気がする」と柿崎は言っていた。
そのことを警察には話していないらしい。
気のせいかもしれないし、自分の言葉で罪のない人が疑われることになったらと思うと怖かったんだとか。
他になにか菜摘のことで思い出したことがあったら連絡をして貰う約束をして電話を切る。

名簿の中に杉田和人という名前があった。
森に柿崎とのやり取りを説明し意見を聞いてみることにした。

『なるほど。怪しいですね』
『今のところ失踪の原因になりそうな話はこれしかないからな』
『そうですね、ボクの方も植野菜摘は良い子だったとか明るくて元気で自ら失踪するとは思えないとかそんな話ばっかりでしたからね』
『どうする?電話してみるか?』
『そうですね。ボクが掛けます』

森に任せることにした。
正直なんて言っていいのか分からなかったから。
元々しっかりしていたが後輩のクセにこんなに頼りになるとは思わなかった。

『あ、もしもし、杉田?』

繋がったようだ。電話番号が変わっていなかったようで運が良い。

『あー、良かった!オレオレ、専門で同じクラスだった梅沢だけど、今度同窓会やりたくてさ!幹事手伝ってくれないか?……そこをなんとか!みんな電話繋がんなくてさ!今度の日曜作戦会議しようぜ!』

森は何を言っているんだろうか。
待ち合わせ場所が決まったようで電話を切った。

『おい』
『なんですか』
『植野菜摘のこと全然きいてないじゃねーか』
『電話じゃ逃げられるかもしれないじゃないですか』
『あー、まあ』
『直接会ってヤツを問い詰めましょう』
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