フィンガーマン
6
8月21日(火)の菜摘は朝から学校に行っていたそうだ。
夏休み前までに提出しなくてはいけないショー用のデザイン画と作りかけの衣装が無くなっていたそうだ。
あちこち探したが見当たらず、仕方なく一からやり直したんだとか。
遅くまで作業していたが一日で終わるはずもなく諦めてコンビニで弁当を買ってきて帰宅。
少ししてから携帯と財布を握りしめ慌てた様子で菜摘が家を飛び出してきたらしい。
そのまますぐにタクシーに飛び乗りどこかへ行ってしまった。
杉田は急いで追いかけようとしたが中々タクシーが捕まらず、諦めて家の前で待つことにした。
しかしいつまで待ってもその日菜摘は家に帰ってくることはなかった。
杉田も一度帰宅して少し休んでからまた菜摘の家に行ってみたが帰った様子がなかった。
どうして帰っていないのが分かったかというと菜摘の部屋のドアに紙を挟んでおいたらしい。
ドアが一度でも開けばなくなっているはずの紙がそのままドアに残っている。
菜摘の母親がドアを開けるその日までその紙がなくなることはなかったのだった。
『つまり菜摘は何者かに急に呼び出されたということか』
『恐らく……』
『呼び出した顔見知りが菜摘を失踪させた犯人か、向かってる途中で何らかの事件に巻き込まれたかということですね…』
『それもこいつの言ってる事が本当だったらな』
『ほ、本当ですよ!』
『ふーん』
やっぱり館林は杉田の言葉をあまり信じていないようだった。
『どうして菜摘のことが好きになったんだ?』
『ひ、一目惚れでした』
『喋ったことは?』
『ほとんどありません』
『ふーん』
『そういえば唯一喋ったことがちょっと変なんです』
『変?』
いつものように菜摘を見つめていたら急に声を掛けられたらしい。
失踪の3週間くらい前のことだ。
『あ!杉田くん!』
『へ…?』
『隣のクラスの杉田くんだよね?』
『あ、はい』
『私、植野菜摘』
『あ、どうも』
『杉田くん幽霊とか信じる?』
『え?』
『あー…ごめん!やっぱ何でもない。変なこと言ってごめんね!』
『あ、いえ』
『じゃあ、またね!』
『あ、はい、また…!』
そういって菜摘は去っていった。
『なんだよそれ』
『特に意味はなさそうですが』
『これが最初で最後の会話でした』
結局菜摘の失踪の原因は分からなかったが森は杉田の名刺をもぎ取りいつでもコンタクトが取れる状態でようやく杉田を解放することになった。
夏休み前までに提出しなくてはいけないショー用のデザイン画と作りかけの衣装が無くなっていたそうだ。
あちこち探したが見当たらず、仕方なく一からやり直したんだとか。
遅くまで作業していたが一日で終わるはずもなく諦めてコンビニで弁当を買ってきて帰宅。
少ししてから携帯と財布を握りしめ慌てた様子で菜摘が家を飛び出してきたらしい。
そのまますぐにタクシーに飛び乗りどこかへ行ってしまった。
杉田は急いで追いかけようとしたが中々タクシーが捕まらず、諦めて家の前で待つことにした。
しかしいつまで待ってもその日菜摘は家に帰ってくることはなかった。
杉田も一度帰宅して少し休んでからまた菜摘の家に行ってみたが帰った様子がなかった。
どうして帰っていないのが分かったかというと菜摘の部屋のドアに紙を挟んでおいたらしい。
ドアが一度でも開けばなくなっているはずの紙がそのままドアに残っている。
菜摘の母親がドアを開けるその日までその紙がなくなることはなかったのだった。
『つまり菜摘は何者かに急に呼び出されたということか』
『恐らく……』
『呼び出した顔見知りが菜摘を失踪させた犯人か、向かってる途中で何らかの事件に巻き込まれたかということですね…』
『それもこいつの言ってる事が本当だったらな』
『ほ、本当ですよ!』
『ふーん』
やっぱり館林は杉田の言葉をあまり信じていないようだった。
『どうして菜摘のことが好きになったんだ?』
『ひ、一目惚れでした』
『喋ったことは?』
『ほとんどありません』
『ふーん』
『そういえば唯一喋ったことがちょっと変なんです』
『変?』
いつものように菜摘を見つめていたら急に声を掛けられたらしい。
失踪の3週間くらい前のことだ。
『あ!杉田くん!』
『へ…?』
『隣のクラスの杉田くんだよね?』
『あ、はい』
『私、植野菜摘』
『あ、どうも』
『杉田くん幽霊とか信じる?』
『え?』
『あー…ごめん!やっぱ何でもない。変なこと言ってごめんね!』
『あ、いえ』
『じゃあ、またね!』
『あ、はい、また…!』
そういって菜摘は去っていった。
『なんだよそれ』
『特に意味はなさそうですが』
『これが最初で最後の会話でした』
結局菜摘の失踪の原因は分からなかったが森は杉田の名刺をもぎ取りいつでもコンタクトが取れる状態でようやく杉田を解放することになった。