フィンガーマン
走り回ったり色々考えたりでグッタリしながら帰宅した。

"おかえり"

菜摘はもう家に居たようだ。

"ただいま"

"どこに行ってたの?"

"同僚と運動してきた"

"仲良しだね"

"まあな"

"菜摘、今何してる?"

"壁に寄っ掛かってる"

"どこの壁?"

"窓の真横"

"ああ変な傷のところかな"

"傷?"

"ほらなんかわざとつけたみたいなやつ"

"待って"

"ん?"

少し間を置いてからまた音が聞こえてきた。
トイレにでも行ってたのだろうか。
なんてことを言ったら菜摘は怒るだろうな。

"ハートマーク?"

"え?"

"壁の傷"

"そう見えるかも"

"なるほどね"

"どうかした?"

"ハートマークの左側にきて"

"分かった"

"座ってる?"

"うん"

"私はハートマークの右側に座ってるよ"

"隣にいるんだな"

"うん、なんかいいね"

"そうだな"

それからハートマークの左側に俺が座り、右側に菜摘が座るようになった。
こんな時間がずっと続けば良いのに。
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