フィンガーマン
8月19日日曜日――――菜摘失踪まで残り2日――――
『あ!ありました。学生時代からここで一人暮らしをしているそうです。今なら居るはずですよ』
森が杉田の家へと案内してくれた。
玄関のチャイムを押し、館林が除き穴を指で隠し、宅配業者を装った。
杉田は無用心にドアを開けたのでそのまま勢い良く館林がドアを引っ張り、森が隙間から玄関に体を滑り込ませた。
こいつらの悪知恵コンビネーションには驚かされっぱなしだった。
『邪魔するぜ』
新喜劇のような挨拶で強引に押し入る俺たち。
杉田は困惑して抵抗を試みるが多勢に無勢。
誰を止めればいいのかとアワアワしているだけで、なんの効力も無かった。
『な、なんなんですか』
怖々と聞いてくる杉田。
『時間がないんだ』
『時間……?』
どうせ杉田には意味が分からないだろうが適当に返事をすると部屋の中を物色し始める。
とはいえ強盗のように荒らしている訳ではない。
動かしたものはちゃんと元の場所に戻している。
『何してるんですか!?』
杉田はそんな俺たちの行動に驚いてやめさせようとする。
誰も杉田の言葉に耳を貸さないので杉田は観念したように立ち尽くしていた。
『何か探してるんですか……?』
誰も答えない。
『言ってもらったら出しますから、ちょっと一旦やめてもらえませんか?』
俺は杉田の提案に手を止める。
二人はそのまま続行のようだった。
『植野菜摘に関係するものを探している』
『植野さんに関係するものですか…?』
『率直に言わせてもらう』
『なんですか』
『俺はやっぱり君が菜摘の失踪に関与していると思っている』
『そんな』
『色々調べたけど君以外に怪しい人間はいないんだよ』
『僕は何もしてません』
『菜摘に執拗なストーカー行為をしてたじゃないか』
『それは……ただ、見てただけです……』
『なぜ嘘をつくんだ』
『嘘…?』
『つけまわしたり郵便物を荒らしたり変な電話かけたりプレゼントを玄関に置いたりしてただろ』
『え?』
『ストーカー行為がエスカレートしたんだろ』
『待ってください』
『菜摘をどこに連れ去った!』
『違います!』
『なにが違う!』
俺は杉田に詰め寄った。
時間がないため少々手荒になってしまう。
『やってない!僕は見てただけだ!』
『なにを言ってるんだ…?』
杉田に伸ばしていた腕の力が少しだけ抜ける。
『郵便物とか電話とかプレゼントとか知らないんです!』
『なんだと…?』
『あ、携帯……これ見てください』
電話帳を見せられた。
『植野さんの連絡先知らないんです』
確かに電話帳を全て見たが菜摘の電話番号は無かった。
どういうことだ。
杉田は本当に見ていただけだとしたら、他にもストーカーが居るということか……?
いつの間にか館林と森が近くに来ていた。
『ありませんね。菜摘に繋がりそうなもの』
『おい、お前の他にストーカーがいるってことか?』
館林が高圧的に杉田に訊ねた。
『わ、分かりません』
『菜摘をつけ回してる時に同じようなことをして居る人を見かけませんでしたか?』
『植野さんのことしか見てなかったから…その……すみません』
『くそ、なんで気づかねーんだよ』
『四六時中つけ回していたのではなく、菜摘と接触しないタイミングを狙って動いていたのかもしれませんね、その二人目のストーカーは』
『じゃあどうやって見つけりゃいいんだよ』
『困りましたね』
『そういえば……』
『なんだ!』
『早朝に菜摘さんを見に行ってた時に住人ではない女の人を何度か見かけました』
『柿崎里沙か?』
『違います、学校では見たことない知らない子です』
『なんだよそれ』
『女か……』
『あ!ありました。学生時代からここで一人暮らしをしているそうです。今なら居るはずですよ』
森が杉田の家へと案内してくれた。
玄関のチャイムを押し、館林が除き穴を指で隠し、宅配業者を装った。
杉田は無用心にドアを開けたのでそのまま勢い良く館林がドアを引っ張り、森が隙間から玄関に体を滑り込ませた。
こいつらの悪知恵コンビネーションには驚かされっぱなしだった。
『邪魔するぜ』
新喜劇のような挨拶で強引に押し入る俺たち。
杉田は困惑して抵抗を試みるが多勢に無勢。
誰を止めればいいのかとアワアワしているだけで、なんの効力も無かった。
『な、なんなんですか』
怖々と聞いてくる杉田。
『時間がないんだ』
『時間……?』
どうせ杉田には意味が分からないだろうが適当に返事をすると部屋の中を物色し始める。
とはいえ強盗のように荒らしている訳ではない。
動かしたものはちゃんと元の場所に戻している。
『何してるんですか!?』
杉田はそんな俺たちの行動に驚いてやめさせようとする。
誰も杉田の言葉に耳を貸さないので杉田は観念したように立ち尽くしていた。
『何か探してるんですか……?』
誰も答えない。
『言ってもらったら出しますから、ちょっと一旦やめてもらえませんか?』
俺は杉田の提案に手を止める。
二人はそのまま続行のようだった。
『植野菜摘に関係するものを探している』
『植野さんに関係するものですか…?』
『率直に言わせてもらう』
『なんですか』
『俺はやっぱり君が菜摘の失踪に関与していると思っている』
『そんな』
『色々調べたけど君以外に怪しい人間はいないんだよ』
『僕は何もしてません』
『菜摘に執拗なストーカー行為をしてたじゃないか』
『それは……ただ、見てただけです……』
『なぜ嘘をつくんだ』
『嘘…?』
『つけまわしたり郵便物を荒らしたり変な電話かけたりプレゼントを玄関に置いたりしてただろ』
『え?』
『ストーカー行為がエスカレートしたんだろ』
『待ってください』
『菜摘をどこに連れ去った!』
『違います!』
『なにが違う!』
俺は杉田に詰め寄った。
時間がないため少々手荒になってしまう。
『やってない!僕は見てただけだ!』
『なにを言ってるんだ…?』
杉田に伸ばしていた腕の力が少しだけ抜ける。
『郵便物とか電話とかプレゼントとか知らないんです!』
『なんだと…?』
『あ、携帯……これ見てください』
電話帳を見せられた。
『植野さんの連絡先知らないんです』
確かに電話帳を全て見たが菜摘の電話番号は無かった。
どういうことだ。
杉田は本当に見ていただけだとしたら、他にもストーカーが居るということか……?
いつの間にか館林と森が近くに来ていた。
『ありませんね。菜摘に繋がりそうなもの』
『おい、お前の他にストーカーがいるってことか?』
館林が高圧的に杉田に訊ねた。
『わ、分かりません』
『菜摘をつけ回してる時に同じようなことをして居る人を見かけませんでしたか?』
『植野さんのことしか見てなかったから…その……すみません』
『くそ、なんで気づかねーんだよ』
『四六時中つけ回していたのではなく、菜摘と接触しないタイミングを狙って動いていたのかもしれませんね、その二人目のストーカーは』
『じゃあどうやって見つけりゃいいんだよ』
『困りましたね』
『そういえば……』
『なんだ!』
『早朝に菜摘さんを見に行ってた時に住人ではない女の人を何度か見かけました』
『柿崎里沙か?』
『違います、学校では見たことない知らない子です』
『なんだよそれ』
『女か……』