フィンガーマン
涼しい風が火照った体を冷ましてくれる。
中は子供の頃に通った図書館と何らかわりはなかった。
キッズスペースの子供たちの声が聞こえるだけで、基本的にはシーンと静まり返っている。

ペダル式の冷水機を見つけ、喉の乾きを潤す。
子供の頃に本当によくお世話になった。
懐かしいなっと一人で顔が緩む。

せっかくなので適当な雑誌を手に取ると空いている席に座る。
この辺りのグルメ雑誌だった。

そうかこの辺のことはここで情報収集出来そうだな。

ペラペラとめくり次に行きたいお店を携帯にメモったら棚へ戻す。
ん?近くに物騒なコーナーがあった。
この辺りの実際の事件を特集しているようだ。
素通りしようとも思ったが治安が悪い場所とかも把握しておいた方がいいんじゃないか。
そう思いわりと新しい特集を選び席に戻る。

ペラペラめくると痛ましい事件からちょっとした事件まで様々なものがあった。

あれ?写真の建物の外観に見覚えがあり手が止まる。
っていうかこれ、見覚えがあるどころじゃない。
俺んちだ。

記事を読んでいく。
要約すると今から6年前の夏、独り暮らしの女性が謎の失踪を遂げたようだ。
彼女は18歳で高校卒業後実家を出て近くの専門学校に通っていた。
急に学校に来なくなり、不審に思った友人や学校が彼女に連絡するも応答はなく家族に知らせたそうだ。
母親が家を訪ねると部屋は腐ったような臭いがした。
一瞬最悪の想像をしてしまったが、部屋には彼女の姿はなかった。
食べかけのお弁当が異臭を放ちテーブルに置いてあったのだ。

真夏の暑い日にこつぜんと姿を消したのだった。
目線の入った女性が写真の中で笑っていた。
< 6 / 50 >

この作品をシェア

pagetop