躊躇わず突き進む(詩集)
きみのかおり
【きみのかおり】
近付いたときに香る
あのほのかな甘さが
わたしの心を捕らえて離さない
きみの眼に映る人が
わたしだけなら良かったのに
一生のうちに見ていい人が
限定ひとりだったら良かったのに
限定したところで
その眼に映るひとりが
わたしとは限らないけれど……
背中を見つめる度
背中を見送る度
1ミリにも満たないであろう
小さな、小さな可能性を
残り香を頼りに膨らませて
今にも消えてしまいそうな
細い月に笑いかけてみる
明日もこんな一日が続くなんて
嫌いじゃないけど
好きでもないよ
きみがわたしを選んでくれるって
そんな保証はないのだから
明日も香りを残してくれたら
それだけで幸せ
明日も香りだけを残してくれたら
それで充分幸せ、――……