躊躇わず突き進む(詩集)

イキノネ


【イキノネ】


嗚呼、いっそのこと
記憶の息の根を
止めてしまいたい

あなたに会った過去を
消してしまいたい

でももしそんなことを謀っても
あなたを好きでいた過去は消せないから
きっと無意識に
たまに無性に
会いたくなるんでしょうね


無機質な灰色の空で
あなたと知らず
あなたに出会う

あなたと在った過去のあれこれを知らないまま
きっとまた、あなたを好きになる
そんな気がするの


それならあなたと在った過去は
消さずに取っておいたほうがいい

そりゃあ悲しい記憶も多いけれど
楽しい記憶もそれなりにある

そう、楽しい記憶もちゃんとあるんだ
優しくて温かくて柔らかくて幸福な記憶が――……

嗚呼、記憶の息の根、止めなくて良かった




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