嘘吐きたちの末路(短編集)
僕は嘘つきだ
【僕は嘘つきだ】
僕は嘘つきだ。
その嘘をきみは「たちの悪いサプライズ」と言って笑って許してくれた。
でも、今度ばかりは許さないでほしい。
「おまえは寂しがり屋だから、俺より先に逝けよ」「俺がよぼよぼのじいさんになっても、しわしわのばあさんのおまえを大事にするよ」
このふたつは、僕の人生で最大にして最悪の嘘になってしまった。
僕を許すきみが悪い。僕を甘やかしたから、僕はきみに数々の嘘をついてしまった。
いや、一番悪いのは、守れもしないことを言った僕か……。
もう「おまえが好きだよ」は嘘偽りのない言葉だったと、伝える術はない。
きみがどんなことを想い、どんな風に生き、どんなに美しいしわを刻んだおばあさんになるのかも、僕は知ることができないのだ。
伏せた目は、重くてもう開かない。
(了)