おじぎ草ときみと(短編集)
恋愛祈願
【恋愛祈願】
どうしても叶えたいお願いだったから、神社にお参りに行く三日前から、親に無理を言って精進料理だけを食べ、当日は朝から水を浴びて身を清め、清潔な服を着て家を出た。
神社に着くと、改めて衣服を整え、会釈をしてから鳥居をくぐった。参道の真ん中は決して歩かず、手水舎で口と手をしっかり清めた。
軽く会釈してから賽銭箱に賽銭を入れ、鈴を鳴らし、二礼二拍手。景気良く柏手を打つ方法も、その意味もしっかり学んで来た。練習通り右手を少し下にずらして手をたたくと、パン、パン! という大きな音が、静かな境内に響き渡る。
そしてずらしていた手を合わせ、心の中で自分の名を名乗り、一方的なお願いにならないよう、謙虚に語りかけた。
「高校最後の一年なので、彼と同じクラスになれたあかつきには積極的に話しかけ、素敵な思い出をたくさん作りたいと思っています。彼はとても人気者で仲の良い女の子はたくさんいますが、わたしもその一人になりたいです。そのために精一杯頑張りますので、どうか、どうか、お見守りください」
深い一礼のあと、お尻を向けないように気をつけて後退りして、やぐらを見て回ったりご神木に触ったりしてパワーをもらった。
そのあとは絵馬を書き、去年のおみくじを木に結んで納めてから、新しくおみくじを引いた。結果は大吉。内容を胸に留め、大事に大事に財布にしまって、鳥居の前でもう一度会釈してから神社を後にした。
残りの春休み期間は規則正しく生活し、新学期に備えて勉強し、話し方や雑学の本を読み漁り、その日を待った。
と、いう、のに……。