おじぎ草ときみと(短編集)
最初が肝心
【最初が肝心】
入園式の朝、いつもより早く起きて来た息子は、なぜかヒーローの恰好をしていた。
青地のTシャツの胸に大きな星のマーク、紅白の腹巻、顔半分を覆うマスクに、胸と同じ星マークがついた盾は鍋のふただ。
何事かと思ったら「さいしょがかんじんだからね!」とのこと。
確かにそうかもしれないけれど、入園式で着るためにヒーロースーツを作ってあげたわけではない。
これは去年のハロウィン用。今年のハロウィンは人気怪獣の第二形態の着ぐるみをリクエストされているから、画像を見つつ、もう制作の計画を練っているというのに。このままでは第二形態の着ぐるみで卒園式に行くと言い出すかもしれない。
最初が肝心。
ハロウィンのことや卒園式のことを考えるのは後回し。とりあえず今はこのヒーロースーツを脱がせて、一刻も早くスーツに着替えさせなければ。
(了)