花咲かじいさんの戯言
序章:枯れ木に花を
枯れ木に、灰をかけてみたことがある。



俺がまだ小学生のころ、『ダイオキシン』なんて言う、環境ホルモンは話題にも上らず、

学校の焼却炉は元気に活動していた。



その焼却炉が、失業を迎える数年前の冬、灰を集めて木に振り掛けた。



当然、桜の花が咲くことはなく、代わりに下を歩いていた教頭の寒そうな頭頂部を覆い隠した。


教頭の説教は1時間に及び、最後に彼はこう言った。


「灰は、根の周りに撒くものだ。そうやって栄養になるんだよ。」


その春、その木には、美しい桜が咲き誇っていた。


その時、漠然と感じたことがある。


『完成』に必要なのは、『奇跡』ではなくて、『栄養』なのだ。



「おーい!一馬、外でサッカーしようぜ!!」

「いや、俺、勉強するから!!立派な人間になるために!!」


「はぁ?」


自分を培うために、知識を吸収して、吸収して…


環境問題とかうるさくなって、ゴミの分別がいっそう厳しくなた頃、


俺は、つまらない人間になっていった…。





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