きらり、きらり、
空色の箱の中にはまあるいガトーショコラを入れた。
クッキー型と粉砂糖で、ふわんふわんの雲の模様を入れて。
それを見た晴太は納得したように笑った。
「ああ、空か!」
この10日間なんてなかったみたいに普通に現れて、謝りもしない私が無言で差し出した袋を「ありがとう」と言って受け取った直後だった。
「こっちの靴下も雲柄だ。すぐ穴あくから助かる。どうもありがとう!」
どうしてこの人はいつもいつも、私の雨雲をきれいに晴らすのか。
目元に力を入れ、鼻を一度すすった私は、あぐらで座る晴太の膝の上に跨がって胸ぐらを締め上げた。
「そんなことよりも先に言うべきことがあるでしょ? なんで普通に笑ってるの?」
たちまち晴太は目を泳がせる。
「俺、まだ何かしたっけ?」
「ここに来てすぐ、まずは私に『謝れ!』って謝罪を要求するべきでしょう!」
「ああ、なるほど」
晴太はくすくすと含むような笑い声を立てた。
「謝罪の気持ちはちゃんと受け取ったつもりだったから。あのしぶしぶ譲歩する美夏見たら、どうでもよくなっちゃって」
「もっと怒ってよ。私が全面的に悪いんだから」
「どうしたらいいのかわからなくて困ったけど、ちょっとだけうれしかった部分もあるんだ」
「なにが?」
「美夏と恋人になったんだなーって。前は『ごめんなさい』『申し訳ない』ばっかりだったから」
握った襟首を持ち上げて力任せに引き寄せる。
勢いをつけすぎたせいで、ぶつかった唇が痛い。
「ごめんなさい」は、そのまま口の上で言った。
雑な謝罪とキスにも、晴太は乱暴だなーとうれしそうに笑う。
だけど「待ってた?」と聞いたら、「うん。……ずっと」とさみしそうに答えたから、
「ごめんなさい。大好きです」
今度はちゃんと謝った。