きらり、きらり、

電話からはまだ母が仏壇に供えるお菓子のことだとか、お隣さんからいただいたお肉のことだとか、お寿司を頼む時間のことなんかを長々と語っているけれど、観るともなくテレビに視線を移して聞き流した。
普段観ることのない平日の情報番組では、私の知らないタレントさんが生き生きと話題のグルメを紹介している。
ゴールデンウィークでも、私が知らなくても、こうして働いている人はたくさんいるのだ。

贅沢だな、と思う。
こんなにストレスフリーな生活しておいて、一抹のさみしさを感じるなんて贅沢だなって。
思えば、去年もこうして家にいた。
引っ越す予定も転職する予定もないから、来年も再来年も、こうしてここにいて、実家に帰ったり友達と会ったりするのだろう。

私は恵まれている方だと自覚している。
嫌いな上司は隣の課だし、生活はしていけてるし、とりあえず健康。
満足しているはずなのに、幸せか? と聞かれたら、幸せですと即答できる自信がない。

このままいつか死ぬとして、そのとき私の人生ってなんだったと思うんだろう?
別に歴史に名前を残したいわけでも、誰かに感謝されたいわけでもないけれど、ひとりくらい泣いてくれる人が欲しい。
あの兄が結婚できるとは思えないから、順当にいったら、私は最期ひとりきり……

うんうん、と生返事を繰り返しながら寝転がったカーペットの上には、今食べたパンの屑が落ちている。
きっとこれがマイナス思考の原因に違いないと、にっくきパン屑を摘まみ上げて空のお皿に落とした。
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