きらり、きらり、
「咲月ちゃん、平気そうですね」
ドーン! ドーン! という大きな音や火薬の匂いを気にする様子もなく色鮮やかな夜空を見上げ、合間にせっせとかき氷を口に運んでは落としている。
「ね! 私もびっくり。もっと泣いて騒ぐかと思った」
咲月ちゃんの膝やビニールシートに落ちるかき氷をその都度拭き取りながら、里葎子さんも上がった花火に目を細めた。
うっとりと眺めつつも口にはフランクフルトを突っ込むあたり、母はたくましい。
花火はもちろんきれいだけど、ひとつ上がるたびに時間が過ぎていくのだと思うと心が軋んだ。
そんな私をよそに、またひとつドーンと花火があがる。
「うーん、まあまあかな」
さっきから携帯で花火を撮っていた初音さんが、視線の合った私に画面を見せる。
「花火って、携帯くらいじゃうまく撮れないですね」
小さな画面にあったのは、平坦な黒い背景にぼやっとした火の粉が散らばっているだけのもの。
花火を撮ったことはわかるけれど、お世辞にもきれいだとは言えない。
「本格的なカメラと技術が必要みたいですね」
「でもいいの。私が楽しんでること伝えたいだけだから」
「もしかして、彼氏さんですか?」
角砂糖がほろほろと崩れるような笑顔で、初音さんはうなずいた。
「仕事で来られないから、嫌味ったらしく送っちゃうんです」
きゅっと携帯を握りしめて笑う初音さんは、彼氏でなくても抱き締めたいほどにかわいらしかった。
「よかったら撮りますよ」
手を差し出すと、
「じゃあお願いします!」
と、かき氷を持って笑顔になった。
白地の浴衣にかき氷のいちごシロップがよく映え、ぼやっと写った花火よりも彼女の方が輝いて撮れた。
「わあ! ありがとうございます!」
残業でも、初音さんは彼氏さんと電話でつながっている。
気持ちがつながっているのだ。
幸せそうに携帯を操作する初音さんの笑顔を、花火の明かりがぱっと照らす。
それがまぶしく感じられて、私は目を細めた。
「浴衣、せっかくだから彼氏さんに見せてあげたかったですね」
「ああ、それは……」
うふふ、と初音さんは手で顔を覆った。
「……そっか、一晩中残業するわけじゃないですもんね」
「ええ、まあ」
暗がりでわかりにくいけど、恐らく頬を染めているであろう彼女に笑顔を返して、音のしない空を見上げる。
地上の賑わいのせいか、いつもより明るい紺藍の空がやけに切ない。