きらり、きらり、
二次会に流れる集団から離れ、目指したのは大きな通りとは反対方向である公園の西口。
後片付けは幹事と新入社員がしてくれるので、里葎子さん一家と別れてしまえばひとりだった。
解放感で観る夜桜は、さっきよりは生き生きして見えるけれど、園内に充満する喧騒の中ではやはり落ち着かない。
桜から視線を逸らして歩く私の足元で、通常より砂の多いアスファルトがざりざりと鳴っていた。
裏通りに続く西口に桜の木はなく、重苦しい松が連なっている。
ざわざわという針葉樹の葉擦れの音は、感じていない不安な気持ちさえ呼び覚ますようだった。
梢を抜けてくる風も、さっきより冷たい。
「やっぱり寒いな」
街灯の少ない西口にあって、自動販売機は唯一の灯火のように強い光を放っていた。
あたたかいミルクティーを見つめながら、お財布から500円玉を投入すると、からんと空虚な音がする。
「あれ?」
500円玉は機械に入らず、そのままつり銭口に落ちていた。
取り出して見てみても、特別おかしなところはない普通の500円玉だ。
けれど、もう一度投入してみても、結果は同じ。
「えー! 一万円しかない……」
お財布を掻き回したけど、小銭は足りないし、自動販売機で一万円は使えない。
はあああああーーーっと、怒りと悲しみの塊が口から出た。
額を自動販売機に預けると、そこからさらに冷たさが全身に広がる。
やっぱりいいことないな、観桜会。