好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「見つけた……!」
掠れた声で、ハアハアと肩で息をする長身の男性。端正な顔立ちにうっすらと汗が滲む。店内にいる女性客が驚きながらもうっとりした眼差しで彼を見つめる。
「あら、尚樹くん。早かったわね」
落ち着いた様子の桜さん。
「藤井!」
名前を呼ばれて固まったままの私は目を見開く。
「お前、何で電話に出ないの? 俺がどれだけ探し回ったと思ってる! あ、セイさん、お会計してくれる? 桜さん、連絡ありがとう」
ほんの少しイラ立った様子で、矢継ぎ早に淀みなく話す桔梗さんに、頭がついていかない。バッグから取り出したスマートフォンにはいくつもの桔梗さんからの着信があった。
どうしてここに桔梗さんがいるの?
どうして私がここにいるって知ってるの?
私を探し回ったってどういうこと?
「はい、莉歩ちゃん、カツサンドね」
桜さんに笑顔で紙袋を渡されてハッと我に返った。
「えっ、あっ、あのっ。すみません、お会計!」
あたふたと財布を出す指が震える。
「尚樹くんからまとめてもらってるから大丈夫よ。尚樹くんの分も作ってあるからふたりでゆっくり食べてね」
すべてを悟ったように桜さんが言う。
「えっ!? な、何で桔梗さんがここに……」
意味がわからずに焦る私にセイさんがカウンターから微笑んで話してくれた。
「尚樹くんから連絡もらってたんだよ。莉歩ちゃんが見つからないから、もしここに来たら連絡してほしいって」
そんな! だから、カツサンド持ち帰りにするって……桔梗さん、どれだけ私の行動範囲を把握しているの!
「お前を逃がさないって言っただろ?」
すっかりいつもの様子を取り戻した用意周到な上司が妖艶に微笑む。
掠れた声で、ハアハアと肩で息をする長身の男性。端正な顔立ちにうっすらと汗が滲む。店内にいる女性客が驚きながらもうっとりした眼差しで彼を見つめる。
「あら、尚樹くん。早かったわね」
落ち着いた様子の桜さん。
「藤井!」
名前を呼ばれて固まったままの私は目を見開く。
「お前、何で電話に出ないの? 俺がどれだけ探し回ったと思ってる! あ、セイさん、お会計してくれる? 桜さん、連絡ありがとう」
ほんの少しイラ立った様子で、矢継ぎ早に淀みなく話す桔梗さんに、頭がついていかない。バッグから取り出したスマートフォンにはいくつもの桔梗さんからの着信があった。
どうしてここに桔梗さんがいるの?
どうして私がここにいるって知ってるの?
私を探し回ったってどういうこと?
「はい、莉歩ちゃん、カツサンドね」
桜さんに笑顔で紙袋を渡されてハッと我に返った。
「えっ、あっ、あのっ。すみません、お会計!」
あたふたと財布を出す指が震える。
「尚樹くんからまとめてもらってるから大丈夫よ。尚樹くんの分も作ってあるからふたりでゆっくり食べてね」
すべてを悟ったように桜さんが言う。
「えっ!? な、何で桔梗さんがここに……」
意味がわからずに焦る私にセイさんがカウンターから微笑んで話してくれた。
「尚樹くんから連絡もらってたんだよ。莉歩ちゃんが見つからないから、もしここに来たら連絡してほしいって」
そんな! だから、カツサンド持ち帰りにするって……桔梗さん、どれだけ私の行動範囲を把握しているの!
「お前を逃がさないって言っただろ?」
すっかりいつもの様子を取り戻した用意周到な上司が妖艶に微笑む。