好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「無理に言わなくて、いい」
変わらない不機嫌な声。いつものような柔らかさの全くない声。
足元にぽっかり真っ暗な穴が開いた気がした。ぐらぐら揺れるのは私の足なのか心なのか。私の身体と心は光の届かない暗い闇に吸い込まれていく。
ああ、やっぱり私の気持ちは桔梗さんの心に届かない。好きなのに、こんなにもあなたが好きなのにやっぱり私は拒絶される。
どうせ受け入れてもらえないなら。全部をあなたに晒けだして、それからひとりで思いきり泣きたい。無様でカッコ悪くて構わないから。
桔梗さんの胸の中で身を捩って、スーツの上着の襟を掴んだ。くしゃくしゃにしてしまうだろうし、零れた涙の痕をつけてしまうだろうけど、もう構わない。グッと顔を上げた。
「私は、あなたがずっと好きでした……!」
襟を掴む手にグッと力を込める。頭の中はこれ以上ないくらいに冴えているのに、手は震えている。新しい涙が零れ落ちて、声がみっともなく詰まった。
きっと私は今散々な表情をしている。それでも構わない。
「ずっと、ずっと好きだった。言ったら別れなきゃいけないから、言えなくて。離れたくなかったから。傍にいたかったから、せめて離れる覚悟ができるまでは彼女でいたかったの……!」
グスグスと嗚咽が漏れた。唇が震えて上手く声が出せない。
「す、好きなの。本当に、こんなに誰かを好きになったことなんてなくて。どうしていいか、わからないくらい、好きで。彼女になれないことはわかってる、それでも一緒にいたいの」
それ以上は言葉にならなかった。胸が張り裂けそうに痛い。支離滅裂な言葉。ぐちゃぐちゃに吐き出した気持ち。止まる気配のない涙が桔梗さんのスーツの襟を掴む手に落ちる。恐くて桔梗さんの顔が見れない。
きっと、彼はこんな私に呆れてる。迷惑をかけてるってわかってる。みっともないってわかってる。
こんな言い方をしたいわけじゃなかった。
だけどもう限界。どうせ終わりになるなら本心を伝えたかった。
変わらない不機嫌な声。いつものような柔らかさの全くない声。
足元にぽっかり真っ暗な穴が開いた気がした。ぐらぐら揺れるのは私の足なのか心なのか。私の身体と心は光の届かない暗い闇に吸い込まれていく。
ああ、やっぱり私の気持ちは桔梗さんの心に届かない。好きなのに、こんなにもあなたが好きなのにやっぱり私は拒絶される。
どうせ受け入れてもらえないなら。全部をあなたに晒けだして、それからひとりで思いきり泣きたい。無様でカッコ悪くて構わないから。
桔梗さんの胸の中で身を捩って、スーツの上着の襟を掴んだ。くしゃくしゃにしてしまうだろうし、零れた涙の痕をつけてしまうだろうけど、もう構わない。グッと顔を上げた。
「私は、あなたがずっと好きでした……!」
襟を掴む手にグッと力を込める。頭の中はこれ以上ないくらいに冴えているのに、手は震えている。新しい涙が零れ落ちて、声がみっともなく詰まった。
きっと私は今散々な表情をしている。それでも構わない。
「ずっと、ずっと好きだった。言ったら別れなきゃいけないから、言えなくて。離れたくなかったから。傍にいたかったから、せめて離れる覚悟ができるまでは彼女でいたかったの……!」
グスグスと嗚咽が漏れた。唇が震えて上手く声が出せない。
「す、好きなの。本当に、こんなに誰かを好きになったことなんてなくて。どうしていいか、わからないくらい、好きで。彼女になれないことはわかってる、それでも一緒にいたいの」
それ以上は言葉にならなかった。胸が張り裂けそうに痛い。支離滅裂な言葉。ぐちゃぐちゃに吐き出した気持ち。止まる気配のない涙が桔梗さんのスーツの襟を掴む手に落ちる。恐くて桔梗さんの顔が見れない。
きっと、彼はこんな私に呆れてる。迷惑をかけてるってわかってる。みっともないってわかってる。
こんな言い方をしたいわけじゃなかった。
だけどもう限界。どうせ終わりになるなら本心を伝えたかった。