好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「で、でもっ。私、営業的なスキルなんて何も……!」
焦る私。
「そんなの皆、初めから持ってないわよ。研修を受けたり、先輩から教わったり、経験を重ねて培うものに決まってるじゃない。それに総合職っていったって、皆が皆、営業担当じゃないわよ。本部とか専門的な部署に就く場合だってあるんだから」
適性があるでしょ、と峰岸さんは冷静に言う。対する私はどうしてよいかわからない。ただ言われたことを理解するだけで精一杯だ。
「藤井さんってそんな表情もするのね、意外だわ」
クスッと峰岸さんが楽しそうに目を細めた。
「え?」
呆けた顔で峰岸さんを見返す。
「あなた、いつも冷静だしあんまり慌ててる姿を見たことがないから」
峰岸さんが小首を傾げておかしそうに言う。
「そんなことないです! いつも慌ててばかりですよ!」
息巻く私に峰岸さんは魅力的な笑顔を浮かべる。
「桔梗くんがあなたを構う気持ちがわかるわ」
「わ、わからないですっ!」
もう何が何だかわからない。クスクス笑いながらも峰岸さんはいつも通りに話す。
「あなたには適性があると思うわ」
真剣な声で言い切る峰岸さん。
「で、でもそんな簡単に職種変更なんてできないですよね?」
恐る恐る峰岸さんに尋ねる。
「まずは上司の推薦と適性検査、試験に面接、研修かしら? 推薦は私と支店長で何とかなるし、試験と面接は私の元上司に対策を聞けるし、適性検査は申し分ないわよ」
さらりと何でもないことのように峰岸さんは話す。
「でも中途変更はすごく難しいって聞いたことが……」
弱々しい声で言い淀む私。
「できそうにない部下に私が薦めると思う?」
挑戦的ともとれる視線で峰岸さんが私を見た。
焦る私。
「そんなの皆、初めから持ってないわよ。研修を受けたり、先輩から教わったり、経験を重ねて培うものに決まってるじゃない。それに総合職っていったって、皆が皆、営業担当じゃないわよ。本部とか専門的な部署に就く場合だってあるんだから」
適性があるでしょ、と峰岸さんは冷静に言う。対する私はどうしてよいかわからない。ただ言われたことを理解するだけで精一杯だ。
「藤井さんってそんな表情もするのね、意外だわ」
クスッと峰岸さんが楽しそうに目を細めた。
「え?」
呆けた顔で峰岸さんを見返す。
「あなた、いつも冷静だしあんまり慌ててる姿を見たことがないから」
峰岸さんが小首を傾げておかしそうに言う。
「そんなことないです! いつも慌ててばかりですよ!」
息巻く私に峰岸さんは魅力的な笑顔を浮かべる。
「桔梗くんがあなたを構う気持ちがわかるわ」
「わ、わからないですっ!」
もう何が何だかわからない。クスクス笑いながらも峰岸さんはいつも通りに話す。
「あなたには適性があると思うわ」
真剣な声で言い切る峰岸さん。
「で、でもそんな簡単に職種変更なんてできないですよね?」
恐る恐る峰岸さんに尋ねる。
「まずは上司の推薦と適性検査、試験に面接、研修かしら? 推薦は私と支店長で何とかなるし、試験と面接は私の元上司に対策を聞けるし、適性検査は申し分ないわよ」
さらりと何でもないことのように峰岸さんは話す。
「でも中途変更はすごく難しいって聞いたことが……」
弱々しい声で言い淀む私。
「できそうにない部下に私が薦めると思う?」
挑戦的ともとれる視線で峰岸さんが私を見た。