好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「女ふたりで何やってんの」
突如頭上から降ってきた低い声にハッと我に返った。
「桔梗くん、何か用?」
いつもと全く変わらない落ち着いた様子で峰岸さんが返事をする。
「峰岸に用はない」
薄手のコートを着たまま、潔いほどきっぱり言い切る私の上司。帰社したばかりなのだとすぐにわかる。
「……桔梗くん、藤井さんに愛想尽かされないように頑張りなさいね」
溜め息をつきつつ、峰岸さんは物凄く残念そうな目で尚樹さんを見る。
「そんなわけないだろ!」
「桔梗さん、河田さんに会いましたか? 戻られたら話があるって仰ってましたよ」
仕事の言伝を思い出して伝える私。
「大方、帰社して一目散に藤井さんを捜しにきたんでしょうけど」
ぼそっと呟く峰岸さんをキッと綺麗な切れ長の目が睨む。負けじと睨み返す峰岸さん。
「当たり前だろ! ほら、莉歩行くぞ!」
桔梗さんが私の腕を掴む。
「き、桔梗さんっ! 名前! ここ会社です!」
慌てて腕を振りほどこうともがく私。
「藤井さんもこんなに執着されて大変ね。桔梗くん、しつこい男は嫌われるわよ」
呆れながら峰岸さんが冷静に言う。
「うるさい!」
仲が良いのか悪いのか、同期の上司同士で言い合っている姿を横目に私はひとり溜め息をついた。
突如頭上から降ってきた低い声にハッと我に返った。
「桔梗くん、何か用?」
いつもと全く変わらない落ち着いた様子で峰岸さんが返事をする。
「峰岸に用はない」
薄手のコートを着たまま、潔いほどきっぱり言い切る私の上司。帰社したばかりなのだとすぐにわかる。
「……桔梗くん、藤井さんに愛想尽かされないように頑張りなさいね」
溜め息をつきつつ、峰岸さんは物凄く残念そうな目で尚樹さんを見る。
「そんなわけないだろ!」
「桔梗さん、河田さんに会いましたか? 戻られたら話があるって仰ってましたよ」
仕事の言伝を思い出して伝える私。
「大方、帰社して一目散に藤井さんを捜しにきたんでしょうけど」
ぼそっと呟く峰岸さんをキッと綺麗な切れ長の目が睨む。負けじと睨み返す峰岸さん。
「当たり前だろ! ほら、莉歩行くぞ!」
桔梗さんが私の腕を掴む。
「き、桔梗さんっ! 名前! ここ会社です!」
慌てて腕を振りほどこうともがく私。
「藤井さんもこんなに執着されて大変ね。桔梗くん、しつこい男は嫌われるわよ」
呆れながら峰岸さんが冷静に言う。
「うるさい!」
仲が良いのか悪いのか、同期の上司同士で言い合っている姿を横目に私はひとり溜め息をついた。