好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
翌日の終業後、峰岸さんに声をかけた。察しのよい峰岸さんは、私の表情を見てさっと立ち上がる。
「応接室に行きましょう」
現在、支店長の隣で話し込んでいる尚樹さんに気づかれないように小さな声で峰岸さんは囁く。
「はい」と私も小さな声で返事をした。空いている小さめの応接室にドアを開けたままにして入る。
「さて、本音を話してくれる?」
艶やかな髪をかき上げながら、峰岸さんは焦げ茶色のソファに座る。峰岸さんの背後には、半分だけ開いたブラインドが見える。
「あの、私……」
何て切り出したらいいのかわからず、目を泳がせて瞬きを繰り返す私に峰岸さんは優しく微笑む。
「緊張しなくていいわよ。思うままに話してみて」
峰岸さんの冷静な一言に、すうと息を吸い込んだ。
「自信は全くないです。だけど、今の自分から変わりたいです。もうひとつ階段を登って峰岸さんと桔梗さんと同じ景色を見れるようになりたいです」
できるだけはっきりと気持ちを伝える。峰岸さんは何も言わない。
「峰岸さんがくださったチャンスをいかしたいです」
真剣な思いを込めて言う。膝の上で握りしめた拳にギュッと力を込める。
「そう」
拍子抜けするくらいに落ち着いた声で峰岸さんは艶やかに微笑む。
「すみません、上手く言えなくて」
自分の不甲斐なさに項垂れる。
「そう? あなたが言いたいことは伝わったわ。これから忙しくなるわね、まずはあなたの仕事を整理して、試験の日程も確認するわ。でもそれよりも……」
峰岸さんは小首を傾げて探るような目で言った。
「何があったの?」
その言葉に何もかも峰岸さんに見透かされていることを悟り、すべてを話した。
「応接室に行きましょう」
現在、支店長の隣で話し込んでいる尚樹さんに気づかれないように小さな声で峰岸さんは囁く。
「はい」と私も小さな声で返事をした。空いている小さめの応接室にドアを開けたままにして入る。
「さて、本音を話してくれる?」
艶やかな髪をかき上げながら、峰岸さんは焦げ茶色のソファに座る。峰岸さんの背後には、半分だけ開いたブラインドが見える。
「あの、私……」
何て切り出したらいいのかわからず、目を泳がせて瞬きを繰り返す私に峰岸さんは優しく微笑む。
「緊張しなくていいわよ。思うままに話してみて」
峰岸さんの冷静な一言に、すうと息を吸い込んだ。
「自信は全くないです。だけど、今の自分から変わりたいです。もうひとつ階段を登って峰岸さんと桔梗さんと同じ景色を見れるようになりたいです」
できるだけはっきりと気持ちを伝える。峰岸さんは何も言わない。
「峰岸さんがくださったチャンスをいかしたいです」
真剣な思いを込めて言う。膝の上で握りしめた拳にギュッと力を込める。
「そう」
拍子抜けするくらいに落ち着いた声で峰岸さんは艶やかに微笑む。
「すみません、上手く言えなくて」
自分の不甲斐なさに項垂れる。
「そう? あなたが言いたいことは伝わったわ。これから忙しくなるわね、まずはあなたの仕事を整理して、試験の日程も確認するわ。でもそれよりも……」
峰岸さんは小首を傾げて探るような目で言った。
「何があったの?」
その言葉に何もかも峰岸さんに見透かされていることを悟り、すべてを話した。