好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「でも、あなたも隠し事ができたんだからお互い様でしょ? 私からは桔梗くんには言わないから、自分で考えて話しなさい。支店長と河田さんには口止めしておくわ。今まで桔梗くんと本当の意味で向き合ってこなかったと思うなら向き合いなさい」
峰岸さんの言葉が的確過ぎて返す言葉がない。ドン、と胸を叩かれた気がした。
「向き合える時に向き合わなきゃ後悔するわよ、私みたいに」
そう言って峰岸さんは自嘲ぎみに笑う。その笑顔がとても切なくて綺麗だった。
「峰岸さんって優しいですよね……」
思い付いたことを口にした私に、峰岸さんが片眉を上げた。
「あなたや橘さんに感化されたの。私にはない素直さや真っ直ぐさにね。同期として言うけど、桔梗くんはあなたひとりを受け止めれないような人じゃないわよ。あなたのことは本当に大事にしてると思うもの」
その言葉に涙が滲む。
大丈夫だと言外に言われた気がした。私は誰かにそう言われたかったのかもしれない。
背中を押してもらいたかったのかもしれない。
彼に甘えて、彼にすべてを晒け出してもいいのだと、教えてもらいたかったのかもしれない。
大人になると、どうして好きな人に気持ちをぶつけることがこんなに難しくなるのだろう。ずっと一緒にいたいという未来を素直に口に出せなくなるのだろう。
何かひとつ伝えることに理由が必要になることがとても悲しい。
「内緒話はこれくらいにしましょうか。仕事は厳しいスケジュールになるから、覚悟してよ」
そう言って憧れの上司は颯爽と立ち上がった。
峰岸さんの言葉が的確過ぎて返す言葉がない。ドン、と胸を叩かれた気がした。
「向き合える時に向き合わなきゃ後悔するわよ、私みたいに」
そう言って峰岸さんは自嘲ぎみに笑う。その笑顔がとても切なくて綺麗だった。
「峰岸さんって優しいですよね……」
思い付いたことを口にした私に、峰岸さんが片眉を上げた。
「あなたや橘さんに感化されたの。私にはない素直さや真っ直ぐさにね。同期として言うけど、桔梗くんはあなたひとりを受け止めれないような人じゃないわよ。あなたのことは本当に大事にしてると思うもの」
その言葉に涙が滲む。
大丈夫だと言外に言われた気がした。私は誰かにそう言われたかったのかもしれない。
背中を押してもらいたかったのかもしれない。
彼に甘えて、彼にすべてを晒け出してもいいのだと、教えてもらいたかったのかもしれない。
大人になると、どうして好きな人に気持ちをぶつけることがこんなに難しくなるのだろう。ずっと一緒にいたいという未来を素直に口に出せなくなるのだろう。
何かひとつ伝えることに理由が必要になることがとても悲しい。
「内緒話はこれくらいにしましょうか。仕事は厳しいスケジュールになるから、覚悟してよ」
そう言って憧れの上司は颯爽と立ち上がった。