好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「お疲れ様です、藤井です。変更研修三日目終了しました」
峰岸さんの声が聞こえない。
「あの、峰岸さん? 藤井ですが……」
怪訝に思って問い返すと、思いもしなかった人の声が聞こえた。
「……変更研修って何? お前、七年目研修じゃないの?」
畏怖を感じるほどの低い声が届く。
「答えろ、藤井」
有無を言わせない口調。その静かな声に尚樹さんの怒りを感じた。
「き、桔梗さん……」
ごくりと喉が鳴った。
しまった、と思っても後の祭りだ。峰岸さんと思い込んで話してしまった私の責任だ。こんな状況でばれるなんて最悪だ。
「あ、あの。一般事務職から総合職への変更で……」
しどろもどろに言い訳をする私。嫌な汗がスマートフォンを握る手に滲む。
「そうじゃなくて、何でお前がそれを受講してる? それって受講するまでに試験も面談も上司の推薦も必要だろ、俺は何も聞いてないんだけど? 俺はお前の直属の上司じゃなかったか?」
淡々と冷静な声で繰り出される声が、頭に響く。顔から血の気がひいていくのがわかる。
ドキンドキンドキン、速くなる鼓動を感じる。
「誰に頼んだ? お前、何を考えてる?」
聞いたことのない低い声に、これ以上ない尚樹さんの不機嫌さを感じた。
「あの、違う私……ただ」
声が震える。
あなたに追い付きたくて、違う仕事にも挑戦してみたかった。そう言いたいのに、完全に狼狽えてしまった私の頭は口は正確に言葉を紡げない。
峰岸さんの声が聞こえない。
「あの、峰岸さん? 藤井ですが……」
怪訝に思って問い返すと、思いもしなかった人の声が聞こえた。
「……変更研修って何? お前、七年目研修じゃないの?」
畏怖を感じるほどの低い声が届く。
「答えろ、藤井」
有無を言わせない口調。その静かな声に尚樹さんの怒りを感じた。
「き、桔梗さん……」
ごくりと喉が鳴った。
しまった、と思っても後の祭りだ。峰岸さんと思い込んで話してしまった私の責任だ。こんな状況でばれるなんて最悪だ。
「あ、あの。一般事務職から総合職への変更で……」
しどろもどろに言い訳をする私。嫌な汗がスマートフォンを握る手に滲む。
「そうじゃなくて、何でお前がそれを受講してる? それって受講するまでに試験も面談も上司の推薦も必要だろ、俺は何も聞いてないんだけど? 俺はお前の直属の上司じゃなかったか?」
淡々と冷静な声で繰り出される声が、頭に響く。顔から血の気がひいていくのがわかる。
ドキンドキンドキン、速くなる鼓動を感じる。
「誰に頼んだ? お前、何を考えてる?」
聞いたことのない低い声に、これ以上ない尚樹さんの不機嫌さを感じた。
「あの、違う私……ただ」
声が震える。
あなたに追い付きたくて、違う仕事にも挑戦してみたかった。そう言いたいのに、完全に狼狽えてしまった私の頭は口は正確に言葉を紡げない。