好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
ニコッと久住部長が優美に微笑む。
「そっか、じゃあ合格だね」
満足そうに言ってトレイを持ち上げて席を立つ。
「少しでもお腹に何か入れてから戻りなさい。飛行機の中で気分が悪くなるよ」
その顔はまさに有能な上司そのもので、会えない大好きな上司を思い出して胸がツキリと軋んだ。
「は、はい」
「気を付けて帰りなさい」と颯爽と片手を上げて久住部長が去っていく。
部長と入れ違いに現れた佳子ちゃんにも促されて、私はサンドイッチを無理矢理喉に流し込んで教室に戻った。佳子ちゃんには部長と一緒の姿は見られていないようで、何も聞かれずほっとした。
今はまだ平常心で事情を話せそうにないから。
「藤井さん。これ、今から最終面談を待っている間に済ませる課題だから、完成したら札幌支店から送ってね」
昼休み後、担当講師に茶封筒を渡されて、私はぽかんとする。
「え、あの?」
「三時半の飛行機でしょ? 今から出ても二時半くらいになるわ、急ぎなさいよ」
当たり前のように担当講師が私を急かす。
「ええっ、莉歩ちゃん、最終面談を受けずに帰るの?」
佳子ちゃんの驚いた声に担当講師が顔をしかめた。
「違います、藤井さんは遠方だから昼休みに最終面談を済ませたと久住部長から伺っています。藤井さん、帰り支度は済んだの?」
久住部長……まさか、あれが面談なの!?
先程の部長とのやり取りを反芻する。
担当講師にあれよあれよという間に押し出されて、私は佳子ちゃんとの挨拶もそこそこに、気がつけばバスに乗っていた。
何が何だかわからない。駅に着いて、慌ててスマートフォンを取り出すと、峰岸さんから電話をするようにとメールが届いていた。
「そっか、じゃあ合格だね」
満足そうに言ってトレイを持ち上げて席を立つ。
「少しでもお腹に何か入れてから戻りなさい。飛行機の中で気分が悪くなるよ」
その顔はまさに有能な上司そのもので、会えない大好きな上司を思い出して胸がツキリと軋んだ。
「は、はい」
「気を付けて帰りなさい」と颯爽と片手を上げて久住部長が去っていく。
部長と入れ違いに現れた佳子ちゃんにも促されて、私はサンドイッチを無理矢理喉に流し込んで教室に戻った。佳子ちゃんには部長と一緒の姿は見られていないようで、何も聞かれずほっとした。
今はまだ平常心で事情を話せそうにないから。
「藤井さん。これ、今から最終面談を待っている間に済ませる課題だから、完成したら札幌支店から送ってね」
昼休み後、担当講師に茶封筒を渡されて、私はぽかんとする。
「え、あの?」
「三時半の飛行機でしょ? 今から出ても二時半くらいになるわ、急ぎなさいよ」
当たり前のように担当講師が私を急かす。
「ええっ、莉歩ちゃん、最終面談を受けずに帰るの?」
佳子ちゃんの驚いた声に担当講師が顔をしかめた。
「違います、藤井さんは遠方だから昼休みに最終面談を済ませたと久住部長から伺っています。藤井さん、帰り支度は済んだの?」
久住部長……まさか、あれが面談なの!?
先程の部長とのやり取りを反芻する。
担当講師にあれよあれよという間に押し出されて、私は佳子ちゃんとの挨拶もそこそこに、気がつけばバスに乗っていた。
何が何だかわからない。駅に着いて、慌ててスマートフォンを取り出すと、峰岸さんから電話をするようにとメールが届いていた。