好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
飛行機は多少の遅延はあったものの、順調に新千歳空港に到着した。東京とは違う爽やかな気候に懐しささえ感じる。
【桔梗くんには言付けがあるから案内所に寄るように伝えたから、案内所の前で待っていなさい】
峰岸さんから届いていたメールに目を通す。画面をスクロールする指が震える。
案内所に行く足が自然と早足になる。桔梗さんの姿は見えない。
ドキンドキンドキン……緊張とはやる気持ちで胸がいっぱいになる。目の前を通りすぎていく人をじっと見つめた。キャリーバッグをひいて急ぐ人、楽しそうに笑って通り過ぎていく人。様々な人が行きかう。大好きな人を見つけるために、見失わないために。荷物を握る指に力が入る。
カツン、カツン、カツン、聞き慣れた足音が近付く。
間違えない、この足音は知っている。近付いてくる長い足と引き締まった体躯。端正な甘い顔立ち。
私の大好きな人。
「……尚樹さん」
泣き出しそうな想いを抱えて名前を呼ぶと涙が滲んだ。
「莉歩……?」
吃驚して尚樹さんが私を見て小さく呟く。
「……ごめんなさい、尚樹さん」
言いたいことはたくさんあったはずなのに、尚樹さんの顔を見た途端、会いたかった気持ちと不安、悲しみが堰を切ったように溢れだす。
「ごめんなさい、私、尚樹さんに黙ってた! 置いていかれることが恐かったの。遠距離恋愛は、普通の恋愛すら下手な私にはできるのか自信がなくて、だけど離れたくなかったら……!」
突然泣きだして話す私に尚樹さんが慌てる。
「ちょっ……莉歩? え、何で?」
困らせていることはわかっている。でも言わせてほしい。
【桔梗くんには言付けがあるから案内所に寄るように伝えたから、案内所の前で待っていなさい】
峰岸さんから届いていたメールに目を通す。画面をスクロールする指が震える。
案内所に行く足が自然と早足になる。桔梗さんの姿は見えない。
ドキンドキンドキン……緊張とはやる気持ちで胸がいっぱいになる。目の前を通りすぎていく人をじっと見つめた。キャリーバッグをひいて急ぐ人、楽しそうに笑って通り過ぎていく人。様々な人が行きかう。大好きな人を見つけるために、見失わないために。荷物を握る指に力が入る。
カツン、カツン、カツン、聞き慣れた足音が近付く。
間違えない、この足音は知っている。近付いてくる長い足と引き締まった体躯。端正な甘い顔立ち。
私の大好きな人。
「……尚樹さん」
泣き出しそうな想いを抱えて名前を呼ぶと涙が滲んだ。
「莉歩……?」
吃驚して尚樹さんが私を見て小さく呟く。
「……ごめんなさい、尚樹さん」
言いたいことはたくさんあったはずなのに、尚樹さんの顔を見た途端、会いたかった気持ちと不安、悲しみが堰を切ったように溢れだす。
「ごめんなさい、私、尚樹さんに黙ってた! 置いていかれることが恐かったの。遠距離恋愛は、普通の恋愛すら下手な私にはできるのか自信がなくて、だけど離れたくなかったら……!」
突然泣きだして話す私に尚樹さんが慌てる。
「ちょっ……莉歩? え、何で?」
困らせていることはわかっている。でも言わせてほしい。