好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「そもそも、俺が莉歩を置いていくとか離れるとかありえないだろ」
空港内のコーヒーショップで、尚樹さんがアイスコーヒーを飲みながら文句を言う。
「俺がどれだけお前を想ってると思ってんの? 絶対俺の方がお前を好きだよ」
テイクアウトの透明なコーヒーカップを尚樹さんが揺らす。カラカラと氷がぶつかる音がする。尚樹さんの拗ねた様子に反論がうまくできない。
「大体、何で峰岸なんだよ。普通は彼氏で上司の俺に一番最初に言うだろ。俺が一番莉歩を理解しているはずなのに!」
峰岸さんに散々嫌味を言われたらしい。
「彼氏のくせに相談もしてもらえないのね」とか「信用されてないんじゃない」とかそれはもう日頃の検印のお返しとばかりに言われ、極めつけは「嫌われたんじゃない」ととどめの一撃をもらったらしい。
うう……峰岸さん、さすが最強です。
「アイツ、女心は繊細なの、とか訳わかんないこと言って威張るし。莉歩、もう俺に隠してることないよな?」
じっと綺麗な切れ長の目を細めて私を見る。コクコクと小さくなりながら何度も頷く私。
どうやらまだ機嫌はなおりそうもない。
「あの尚樹さん、怒ってる?」
恐る恐る尋ねるとキョトンとした焦げ茶色の瞳にぶつかった。プハッと尚樹さんが破顔する。
「怒るわけないだろ。俺、きっと一生お前には本気で怒らない自信あるよ」
絶対嘘だ! 今まで散々拗ねていたくせに!
そう思っていても、躊躇いもせず言い切る尚樹さんから目が離せなかった。
キラキラ輝く彼の笑顔と、一生という単語がくすぐったかった。その言葉がどれほど私には嬉しかったか、尚樹さんは知っているのだろうか。
空港内のコーヒーショップで、尚樹さんがアイスコーヒーを飲みながら文句を言う。
「俺がどれだけお前を想ってると思ってんの? 絶対俺の方がお前を好きだよ」
テイクアウトの透明なコーヒーカップを尚樹さんが揺らす。カラカラと氷がぶつかる音がする。尚樹さんの拗ねた様子に反論がうまくできない。
「大体、何で峰岸なんだよ。普通は彼氏で上司の俺に一番最初に言うだろ。俺が一番莉歩を理解しているはずなのに!」
峰岸さんに散々嫌味を言われたらしい。
「彼氏のくせに相談もしてもらえないのね」とか「信用されてないんじゃない」とかそれはもう日頃の検印のお返しとばかりに言われ、極めつけは「嫌われたんじゃない」ととどめの一撃をもらったらしい。
うう……峰岸さん、さすが最強です。
「アイツ、女心は繊細なの、とか訳わかんないこと言って威張るし。莉歩、もう俺に隠してることないよな?」
じっと綺麗な切れ長の目を細めて私を見る。コクコクと小さくなりながら何度も頷く私。
どうやらまだ機嫌はなおりそうもない。
「あの尚樹さん、怒ってる?」
恐る恐る尋ねるとキョトンとした焦げ茶色の瞳にぶつかった。プハッと尚樹さんが破顔する。
「怒るわけないだろ。俺、きっと一生お前には本気で怒らない自信あるよ」
絶対嘘だ! 今まで散々拗ねていたくせに!
そう思っていても、躊躇いもせず言い切る尚樹さんから目が離せなかった。
キラキラ輝く彼の笑顔と、一生という単語がくすぐったかった。その言葉がどれほど私には嬉しかったか、尚樹さんは知っているのだろうか。