好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『桔梗尚樹です。今日から宜しくお願いします』
甘い微笑みを浮かべる彼は、間違いなく自分の魅力を知っている人。その証拠に支店内の女性の目の色が変わって色めきたっている。キャア、という小さな悲鳴にも似た歓声。
私は無表情で支店長の隣で妖艶な微笑みを浮かべている男性を見つめた。
『藤井、ちょっと応接に来てくれる?』
朝礼終了後、皆川さんに呼ばれた。皆川さんは三十代後半の柔和な雰囲気をした男性。副支店長という立場だけれど、気難しさのない人当たりがよい上司だ。
『はい』
返事をして、起票しかけの指示書を適当に纏める。
『何かありましたか?』
『いや、桔梗を紹介しようと思って』
どこか楽しそうに皆川さんは人事ファイルを手に私の隣を歩く。応接室に入る前に、シャッターが開き、開店を告げる声が遠くで聞こえた。
コンコン。
不正防止等のため、開け放した応接のドアを皆川さんが形式的に叩く。ソファに座って書類を見ていた長身の男性が、顔を上げて立ち上がる。
『待たせたな、桔梗』
『いえ、資料を拝見していましたから』
ニッコリと爽やかな笑みを浮かべる桔梗さん。
『そうか。藤井、座って』
促されて桔梗さんの向かい側に腰を下ろす。皆川さんが桔梗さんの隣に座る。
甘い微笑みを浮かべる彼は、間違いなく自分の魅力を知っている人。その証拠に支店内の女性の目の色が変わって色めきたっている。キャア、という小さな悲鳴にも似た歓声。
私は無表情で支店長の隣で妖艶な微笑みを浮かべている男性を見つめた。
『藤井、ちょっと応接に来てくれる?』
朝礼終了後、皆川さんに呼ばれた。皆川さんは三十代後半の柔和な雰囲気をした男性。副支店長という立場だけれど、気難しさのない人当たりがよい上司だ。
『はい』
返事をして、起票しかけの指示書を適当に纏める。
『何かありましたか?』
『いや、桔梗を紹介しようと思って』
どこか楽しそうに皆川さんは人事ファイルを手に私の隣を歩く。応接室に入る前に、シャッターが開き、開店を告げる声が遠くで聞こえた。
コンコン。
不正防止等のため、開け放した応接のドアを皆川さんが形式的に叩く。ソファに座って書類を見ていた長身の男性が、顔を上げて立ち上がる。
『待たせたな、桔梗』
『いえ、資料を拝見していましたから』
ニッコリと爽やかな笑みを浮かべる桔梗さん。
『そうか。藤井、座って』
促されて桔梗さんの向かい側に腰を下ろす。皆川さんが桔梗さんの隣に座る。