好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『はい、私のことも好きに呼んでください! 藤井でも莉歩でも! 私も桔梗さんと同じようにセイさんと呼ばせてもらってもいいですか?』
何となく桔梗さんと同じ呼び方をしたくて照れながらそう言うと、セイさんはこらえ切れないようにブブッと吹き出した。
『ああ、ど、どうぞ莉歩ちゃん』
『……セイ、さん?』
何? 何で笑っているの? 私何か変なことした?
『いや、大丈夫、ごめんね。尚樹くん、そんな顔しなくても僕には桜がいるんだよ』
桔梗さん?
くるりと振り返って桔梗さんを見ると桔梗さんはなぜか不機嫌な表情をしていた。
『……そんなんじゃないですよ』
子どものように拗ねた声を出す桔梗さん。
『あら、尚樹くん! 久しぶりね!』
カウンターの奥の扉が開いて元気な声が響いた。セイさんよりは少し年下に見える女性。
『桜、こちら尚樹くんの部下の莉歩ちゃん』
セイさんが私を女性に紹介してくれる。
『尚樹くんの部下なの? 尚樹くん、ちゃんと仕事してるのね、初めまして、莉歩ちゃん。三橋の妻の桜です』
『は、はじめまして、藤井莉歩です。よろしくお願いします』
サッと差し出された手を握ると、とても温かだった。綺麗な黒髪のロングヘアの桜さんが朗らかに笑う。
『莉歩ちゃん、可愛いわねえ。その髪の色って地毛よね、羨ましいわ。よく見たら瞳の色も少しハシバミ色みたいなのね、綺麗ね!』
優しい目でまじまじと見つめられる。
『え、いえ、その……ありがとうございます』
そんなに立て続けに容姿を褒められたことのない私は、どう反応してよいかわからずにたじろぐ。
『藤井、照れるなよ』
片眉をさげて笑う桔梗さん。珍しい無邪気な笑顔に目を惹き付けられる。
『そう言われても、私そんな、褒められることなんて』
焦る私にかまわず彼は言う。
『そうか? 俺もお前の髪と瞳の色は、綺麗で好きだぞ』
ひょいと顔を覗き込まれる。
『好きだぞ』と何でもないことのように言われてドキン、と鼓動が跳ねた。
眼前に広がる桔梗さんの端正な顔立ち。
何となく桔梗さんと同じ呼び方をしたくて照れながらそう言うと、セイさんはこらえ切れないようにブブッと吹き出した。
『ああ、ど、どうぞ莉歩ちゃん』
『……セイ、さん?』
何? 何で笑っているの? 私何か変なことした?
『いや、大丈夫、ごめんね。尚樹くん、そんな顔しなくても僕には桜がいるんだよ』
桔梗さん?
くるりと振り返って桔梗さんを見ると桔梗さんはなぜか不機嫌な表情をしていた。
『……そんなんじゃないですよ』
子どものように拗ねた声を出す桔梗さん。
『あら、尚樹くん! 久しぶりね!』
カウンターの奥の扉が開いて元気な声が響いた。セイさんよりは少し年下に見える女性。
『桜、こちら尚樹くんの部下の莉歩ちゃん』
セイさんが私を女性に紹介してくれる。
『尚樹くんの部下なの? 尚樹くん、ちゃんと仕事してるのね、初めまして、莉歩ちゃん。三橋の妻の桜です』
『は、はじめまして、藤井莉歩です。よろしくお願いします』
サッと差し出された手を握ると、とても温かだった。綺麗な黒髪のロングヘアの桜さんが朗らかに笑う。
『莉歩ちゃん、可愛いわねえ。その髪の色って地毛よね、羨ましいわ。よく見たら瞳の色も少しハシバミ色みたいなのね、綺麗ね!』
優しい目でまじまじと見つめられる。
『え、いえ、その……ありがとうございます』
そんなに立て続けに容姿を褒められたことのない私は、どう反応してよいかわからずにたじろぐ。
『藤井、照れるなよ』
片眉をさげて笑う桔梗さん。珍しい無邪気な笑顔に目を惹き付けられる。
『そう言われても、私そんな、褒められることなんて』
焦る私にかまわず彼は言う。
『そうか? 俺もお前の髪と瞳の色は、綺麗で好きだぞ』
ひょいと顔を覗き込まれる。
『好きだぞ』と何でもないことのように言われてドキン、と鼓動が跳ねた。
眼前に広がる桔梗さんの端正な顔立ち。