好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
少し怒ったようなイラ立ったような表情で左隣から私を凝視する桔梗さん。
『お前はもっと自分に自信をもて』
当然のように言い放つ桔梗さんに、微かなイラ立ちを感じた。
『……無理です』
『何が無理なんだよ?』
意味がわからない、というような不機嫌な表情。整った顔立ちなだけに凄みがある。刺さりそうな鋭い視線を左側から感じながら俯く。
『……桔梗さんみたいに何でも器用にできません。仕事も、何でもこれで正しいのかなって迷ってばかりです。行き当たりばったりで上手く切り抜けられる桔梗さんとは違います……!』
ギュッと膝の上に置いた手を握りしめる。上司に言う言葉じゃない、わかってる。だけど、止まらない。
『可愛げもないです。母親みたいだなんて何回も言われてる。そうなりたかったわけじゃない。誰かがやらなきゃいけないことなら、押し付けあうのが嫌だったからやってただけ。皆のためなんて高尚な気持ちは持ってない。自分が巻き込まれるのが嫌なだけ、ズルいだけ。そんな私が自信なんか持てません!』
じわり。
無意識にきつく閉じた目に涙が滲む。鼻の奥がツンとする。何てみっともない姿。
ああ、私は何を言っているんだろう。こんな支店での話をぶり返したいわけじゃないのに。二十代後半のいい大人なのに。
上司に酷い言い方をして絶対に怒らせた。左隣から変わらずに注がれる視線が熱くてじりじり焦げてしまいそう。沈黙が辛い。
『お前はもっと自分に自信をもて』
当然のように言い放つ桔梗さんに、微かなイラ立ちを感じた。
『……無理です』
『何が無理なんだよ?』
意味がわからない、というような不機嫌な表情。整った顔立ちなだけに凄みがある。刺さりそうな鋭い視線を左側から感じながら俯く。
『……桔梗さんみたいに何でも器用にできません。仕事も、何でもこれで正しいのかなって迷ってばかりです。行き当たりばったりで上手く切り抜けられる桔梗さんとは違います……!』
ギュッと膝の上に置いた手を握りしめる。上司に言う言葉じゃない、わかってる。だけど、止まらない。
『可愛げもないです。母親みたいだなんて何回も言われてる。そうなりたかったわけじゃない。誰かがやらなきゃいけないことなら、押し付けあうのが嫌だったからやってただけ。皆のためなんて高尚な気持ちは持ってない。自分が巻き込まれるのが嫌なだけ、ズルいだけ。そんな私が自信なんか持てません!』
じわり。
無意識にきつく閉じた目に涙が滲む。鼻の奥がツンとする。何てみっともない姿。
ああ、私は何を言っているんだろう。こんな支店での話をぶり返したいわけじゃないのに。二十代後半のいい大人なのに。
上司に酷い言い方をして絶対に怒らせた。左隣から変わらずに注がれる視線が熱くてじりじり焦げてしまいそう。沈黙が辛い。