好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『あら、いいじゃない。尚樹くんも連れてきてあげたいでしょ?』
クスクス笑って桜さんが桔梗さんを茶化す。
『え、そうなんですか?』
真顔で返事をする私。
『……別に』
目を逸らした桔梗さんの耳が少し赤い気がしたけれど、言い負かされそうなので黙っておく。
コトン。
私の前に小さなお皿が置かれた。いつも通りの桔梗さんが口角を上げてニッと笑う。
『召し上がれ』
食べやすいように綺麗に取り分けられたお皿。
『あっ、桔梗さんっ! すみません、私が……』
上司に取り分けてもらう部下ってどうなの……!
立場が無さすぎる。
『いいから気にしないで食べろ。腹、減ったんだろ?』
『ありがとうございます……』
渡されたフォーク。
どこからどこまでも気遣いのできる上司。受けとる時に微かに触れた指先。
一瞬、トクン、と小さく胸が鳴る。
桔梗さんはきっと指が触れたことなんて何とも思ってない。そんなの支店ではよくあること。
なのに今日はどうしてその熱が気になるんだろう。
クスクス笑って桜さんが桔梗さんを茶化す。
『え、そうなんですか?』
真顔で返事をする私。
『……別に』
目を逸らした桔梗さんの耳が少し赤い気がしたけれど、言い負かされそうなので黙っておく。
コトン。
私の前に小さなお皿が置かれた。いつも通りの桔梗さんが口角を上げてニッと笑う。
『召し上がれ』
食べやすいように綺麗に取り分けられたお皿。
『あっ、桔梗さんっ! すみません、私が……』
上司に取り分けてもらう部下ってどうなの……!
立場が無さすぎる。
『いいから気にしないで食べろ。腹、減ったんだろ?』
『ありがとうございます……』
渡されたフォーク。
どこからどこまでも気遣いのできる上司。受けとる時に微かに触れた指先。
一瞬、トクン、と小さく胸が鳴る。
桔梗さんはきっと指が触れたことなんて何とも思ってない。そんなの支店ではよくあること。
なのに今日はどうしてその熱が気になるんだろう。