好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『桔梗です。よろしく、藤井さん。下の名前はりほちゃん?』
うっとりするくらいに綺麗な笑顔で桔梗さんが言う。
私と同い年の二十七歳の女の子だったらここで、頰を赤く染めて俯くだろう。愛想がいい上に超美形、チャラい男性が苦手な私は思いっきり顔をしかめた。
そう、桔梗さんは超、がつくほど美形だった。引き締まった細身の長身に長い足。瞳の色と同じ焦げ茶色のさらりとした髪は長めで無造作に分けて後ろに流している。銀行員の男性は比較的短髪の人が多いのでこれまた珍しい。
小さな顔にきりっとした眉。切れ長の凛々しい二重の目にスッと通った鼻筋。目を縁取る睫毛は信じられないくらいに長い。一見、冷たそうに見える貴公子のような顔立ちだけど、口角が上がった口元がいたずらっ子のような雰囲気を醸し出している。
『そうですけど……それが何か?』
淡々と返事を返す私に、桔梗さんがブハッと吹き出す。
『全然動揺しないね!』
動揺? 何の動揺?
『おもしろい、気に入った』
目を輝かせる桔梗さん。
『はあ……』
よくわからない反応に適当に相づちを打つ私。
『りほちゃん、って呼んでもいい?』
桔梗さんが嬉しそうに尋ねる。
『何のためにですか?』
本気で意味がわからず、真剣に尋ね返す私。
『えっ、そう来る? やばい、すっげえ面白いんだけど』
桔梗さんはなぜか楽しそうだけど、私には全く理解できない。
『私は面白くないので、恐れ入りますが辞退させていただきます」
丁重に全力で拒否をする。
『うわ、初めて断られた!』
ニヤリと先程までの無害な笑顔を顔から消して、桔梗さんはクックッと妖しく笑う。
『……桔梗。藤井で遊ぶな』
見かねた皆川さんが声をかけた。
『遊んでませんよ、本気です」
言い切る桔梗さんに私は胡乱な目を向ける。
こんな上司は迷惑だ。私の冷たい視線に気付いたのか、皆川さんが慌てて話をしてくれた。
うっとりするくらいに綺麗な笑顔で桔梗さんが言う。
私と同い年の二十七歳の女の子だったらここで、頰を赤く染めて俯くだろう。愛想がいい上に超美形、チャラい男性が苦手な私は思いっきり顔をしかめた。
そう、桔梗さんは超、がつくほど美形だった。引き締まった細身の長身に長い足。瞳の色と同じ焦げ茶色のさらりとした髪は長めで無造作に分けて後ろに流している。銀行員の男性は比較的短髪の人が多いのでこれまた珍しい。
小さな顔にきりっとした眉。切れ長の凛々しい二重の目にスッと通った鼻筋。目を縁取る睫毛は信じられないくらいに長い。一見、冷たそうに見える貴公子のような顔立ちだけど、口角が上がった口元がいたずらっ子のような雰囲気を醸し出している。
『そうですけど……それが何か?』
淡々と返事を返す私に、桔梗さんがブハッと吹き出す。
『全然動揺しないね!』
動揺? 何の動揺?
『おもしろい、気に入った』
目を輝かせる桔梗さん。
『はあ……』
よくわからない反応に適当に相づちを打つ私。
『りほちゃん、って呼んでもいい?』
桔梗さんが嬉しそうに尋ねる。
『何のためにですか?』
本気で意味がわからず、真剣に尋ね返す私。
『えっ、そう来る? やばい、すっげえ面白いんだけど』
桔梗さんはなぜか楽しそうだけど、私には全く理解できない。
『私は面白くないので、恐れ入りますが辞退させていただきます」
丁重に全力で拒否をする。
『うわ、初めて断られた!』
ニヤリと先程までの無害な笑顔を顔から消して、桔梗さんはクックッと妖しく笑う。
『……桔梗。藤井で遊ぶな』
見かねた皆川さんが声をかけた。
『遊んでませんよ、本気です」
言い切る桔梗さんに私は胡乱な目を向ける。
こんな上司は迷惑だ。私の冷たい視線に気付いたのか、皆川さんが慌てて話をしてくれた。