好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「こりごり、なんじゃないの。恋愛がよくわからないの。面倒くさいとかそういうんじゃなくて。こういう時にこう言って欲しい、とかこうしてほしい、とかいつも後から言われて、でもいつも望む私にはなれないの」
カタン、と箸を置いた私に心配そうな目を向ける菜々。
「相手の思う通りの自分にならなくていいんだよ、莉歩。それじゃただの言いなりでしょ? 素直に自分の気持ちを伝えればいいの。恋愛は辛いことも苦しいこともいっぱいだけど、何より楽しくて幸せな気持ちになるものだよ?」
「わかってるの。だけど、この人は何を望んでるんだろうとか考えちゃうの。会いたいとか一緒にいたいとか感じる前に考えてしまうの。言っていいことなのか、悪いことなのか、言われたくないんじゃないか、とか。気を遣ってるとかそういうんじゃなくて、どうしたらいいかわからなくなるの」
小さな声で話す私に、菜々は困ったように溜め息をつく。
「莉歩は優しすぎるんだよね。仕事は器用にこなすのに。恋人に対しては本当に臆病。私も莉歩に本音で話してもらえるまですごく時間かかったし」
そう、恋愛以前に私は人付き合いが苦手だ。
仕事なら、割りきって話せるし付き合える。そこまで物怖じしない。積極的にもストイックにもなれる。
だけど仕事から一歩離れた私は、臆病で本当にだめなところばかりだ。
カタン、と箸を置いた私に心配そうな目を向ける菜々。
「相手の思う通りの自分にならなくていいんだよ、莉歩。それじゃただの言いなりでしょ? 素直に自分の気持ちを伝えればいいの。恋愛は辛いことも苦しいこともいっぱいだけど、何より楽しくて幸せな気持ちになるものだよ?」
「わかってるの。だけど、この人は何を望んでるんだろうとか考えちゃうの。会いたいとか一緒にいたいとか感じる前に考えてしまうの。言っていいことなのか、悪いことなのか、言われたくないんじゃないか、とか。気を遣ってるとかそういうんじゃなくて、どうしたらいいかわからなくなるの」
小さな声で話す私に、菜々は困ったように溜め息をつく。
「莉歩は優しすぎるんだよね。仕事は器用にこなすのに。恋人に対しては本当に臆病。私も莉歩に本音で話してもらえるまですごく時間かかったし」
そう、恋愛以前に私は人付き合いが苦手だ。
仕事なら、割りきって話せるし付き合える。そこまで物怖じしない。積極的にもストイックにもなれる。
だけど仕事から一歩離れた私は、臆病で本当にだめなところばかりだ。