好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
それぞれの職場に戻るため並んで歩く。
雪が止んでいて、風もそれほど冷たくなかったので珍しく私たちは地上を歩いていた。支店の看板が見えてきて、菜々と別れる交差点にさしかかり、赤信号に足を止める。
「ね、とにかく。恋愛云々は置いといて、考えてみて」
「何を?」
「クリスマスお見合い会。異性の友達を作る、位の感覚でもいいじゃない? 友達から恋愛に発展することもあるかもよ? 私もひとりだと行きづらいし、ね?」
懇願するかのようにピンクラメのジェルネイルが施された手を合わせてくる菜々。菜々がこんなにも同じことを言ってくることは珍しい。それだけ私を心配してくれているということが伝わる。
「……わかった、考えて」
みる、と答えるはずの声が男性の声に遮られた。
「へえ、藤井、何の話?」
傍らから降ってきた、聞きなれない低い声。
見上げた先には、完璧な微笑みで信号待ちをしている私の上司が立っていた。
その綺麗なチョコレート色の瞳は氷のように冷たい。
雪が止んでいて、風もそれほど冷たくなかったので珍しく私たちは地上を歩いていた。支店の看板が見えてきて、菜々と別れる交差点にさしかかり、赤信号に足を止める。
「ね、とにかく。恋愛云々は置いといて、考えてみて」
「何を?」
「クリスマスお見合い会。異性の友達を作る、位の感覚でもいいじゃない? 友達から恋愛に発展することもあるかもよ? 私もひとりだと行きづらいし、ね?」
懇願するかのようにピンクラメのジェルネイルが施された手を合わせてくる菜々。菜々がこんなにも同じことを言ってくることは珍しい。それだけ私を心配してくれているということが伝わる。
「……わかった、考えて」
みる、と答えるはずの声が男性の声に遮られた。
「へえ、藤井、何の話?」
傍らから降ってきた、聞きなれない低い声。
見上げた先には、完璧な微笑みで信号待ちをしている私の上司が立っていた。
その綺麗なチョコレート色の瞳は氷のように冷たい。