好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「き、桔梗さ、ん」
どうして、ここに!
瞠目する私にはお構いなしに桔梗さんは温度の感じられない微笑みを浮かべる。
「……外出の許可を何で潤にとるのかな?」
「ひっ!!」
思わず後ずさる私のコートの袖を引っ張る興奮ぎみの菜々。
「誰!? このイケメン!」
こっそり呟いたつもりだろうけど、甲高い声のせいか、ばっちり桔梗さんには聞こえたらしい。私への絶対零度のような笑顔はどこへやら、眩い笑顔で菜々に話しかける。
「初めまして、桔梗と申します」
「ああ! 莉歩から聞いたことがあります。初めまして、莉歩の友人の和田です」
ちらりと菜々が私に目配せする。その目には明らかに私への非難が混じっている。
上司の桔梗さんが困った人物だということは以前、菜々に話したことがあった。ただし、見惚れるくらいの美形だとは言わなかったけど。その辺りをきちんと話しなさいよ、と言う視線。
何だか味方がいない気がする。
「あっ、あの。すみません、お昼休みをありがとうございました! 戻りますっ。菜々も、もう時間でしょ? また連絡するからっ!」
とにかく、この厄介な状況を打破すべく、私は早口で話す。
「え、そうなの? 私、もう少し桔梗さんとお話したかったなぁ。じゃあ莉歩、さっきの話考えておいてよ? まあ、代わりに誰か見つかったならいいんだけど?」
桔梗さんを意味深にちらりと見ながら、楽しそうに笑う菜々。
「わ、わかった!」
とりあえず頷く。
心配してくれている菜々には申し訳ないけれど、帰りに断りのメッセージを送ろう。
これでやり過ごせる、そう思ったのに。
「何の話ですか?」
絶対に関わってほしくない上司が、美麗な微笑みで口を挟む。
どうして、ここに!
瞠目する私にはお構いなしに桔梗さんは温度の感じられない微笑みを浮かべる。
「……外出の許可を何で潤にとるのかな?」
「ひっ!!」
思わず後ずさる私のコートの袖を引っ張る興奮ぎみの菜々。
「誰!? このイケメン!」
こっそり呟いたつもりだろうけど、甲高い声のせいか、ばっちり桔梗さんには聞こえたらしい。私への絶対零度のような笑顔はどこへやら、眩い笑顔で菜々に話しかける。
「初めまして、桔梗と申します」
「ああ! 莉歩から聞いたことがあります。初めまして、莉歩の友人の和田です」
ちらりと菜々が私に目配せする。その目には明らかに私への非難が混じっている。
上司の桔梗さんが困った人物だということは以前、菜々に話したことがあった。ただし、見惚れるくらいの美形だとは言わなかったけど。その辺りをきちんと話しなさいよ、と言う視線。
何だか味方がいない気がする。
「あっ、あの。すみません、お昼休みをありがとうございました! 戻りますっ。菜々も、もう時間でしょ? また連絡するからっ!」
とにかく、この厄介な状況を打破すべく、私は早口で話す。
「え、そうなの? 私、もう少し桔梗さんとお話したかったなぁ。じゃあ莉歩、さっきの話考えておいてよ? まあ、代わりに誰か見つかったならいいんだけど?」
桔梗さんを意味深にちらりと見ながら、楽しそうに笑う菜々。
「わ、わかった!」
とりあえず頷く。
心配してくれている菜々には申し訳ないけれど、帰りに断りのメッセージを送ろう。
これでやり過ごせる、そう思ったのに。
「何の話ですか?」
絶対に関わってほしくない上司が、美麗な微笑みで口を挟む。