好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『以前に説明した三喜精工さんの社員向け提携サービスのことは覚えているか?』

北海道では有名な企業である三喜精工株式会社。そこの社員向け提携住宅ローンや預金、様々なサービスを当社が他社と争って受注した。受注規模が大きいため、札幌支店が管轄せず、本部が管轄しようとしていた。
けれど、三喜精工さんに請われ札幌支店管轄になった。
このプロジェクトは業績も大きいことからふたりの人員が赴任することになった。まだプロジェクト自体は構築中で始動していないが、実際に始動して落ち着くまでは事務職のヘルプとして更にひとり派遣されることになっている。
実際にプロジェクトを構築し、今回異例の出世で次長として赴任してくる人が瀬尾潤という二十九歳の男性。
瀬尾さんとは数日前に顔合わせを済ませた。瀬尾さんはまるで王子様のような秀麗な顔立ちをしていた。肌も男性にしては勿体ないくらいにきめが細やかで、長身で足も長い。今日は本部に出張して不在だけれど、赴任して数日で札幌支店が入っているビル中の女性を虜にしている。
札幌支店が入っている十階建のビルには三階以上にテナントさんが五社入っている。
瀬尾さんがビル内のエレベーター、エスカレーターを移動する度に向けられる女性たちのハートマーク付きの熱い視線。けれど瀬尾さん自身は慣れているのか全く歯牙にもかけない。

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