好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「え、それだけ?」
コクンと頷く私。
「くそっ、潤! あーもう俺、カッコ悪……」
いきなり瀬尾さんへの悪態をつく桔梗さん。イラ立ったように髪をガシガシとかき揚げる。
「あの、瀬尾さんがどうかしたんですか?」
恐る恐る桔梗さんに尋ねる。桔梗さんはちら、と私を見て拗ねたように話してくれた。
「潤がお前の外出は、俺には知られたくないプライベートな事情らしいって言ったんだよ。俺には会わせたくない奴と会うのかもなって」
え? ちょっと待って。私、瀬尾さんに説明したよね? 親友と食事にって。それが何でそんなことになるの! 瀬尾さん、絶対に面白がってる!
私の脳裏に王子様が舌を出して笑っている姿が浮かぶ。
「そ、そんなわけないじゃないですかっ!」
キイッと言い返す私に、桔梗さんが反論する。
「お前が最初から俺に許可をとれば良かったんだよ!」
「そ、そんなことでお昼からずっと不機嫌だったんですか!?」
意味がわからない! 何の誤解よ!
「そんなこと、じゃないだろ。結局、お前、似たようなことに巻き込まれてるだろ?」
さっきまで焦っていたくせになぜか形勢逆転して、桔梗さんは再び私を壁際に追い詰める。
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