好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
言われた意味を理解できない。ヒクリ、と喉が鳴る。
「え……?」
瞠目する私にフッと妖しく笑う。
「俺を選べよ、藤井」
繰り返される言葉。
「何、を?」
胸の中に浮かび上がる小さな可能性。まさか、と打ち消す。
「俺がお前の彼氏になれば行かなくてすむよな?」
惹き付けられる煌びやかな笑顔で、桔梗さんはとんでもないことを言う。両手を私の顔の横につき、自由を奪ったまま。思考が止まる。目の前には微塵の隙もない上司の笑顔。その長い両腕の間に閉じ込められた私。
今、何て言った? 彼氏?
「……誰が誰の?」
「俺がお前の。彼氏がいるならお見合い会なんて行かなくてすむよな?」
ご丁寧に優しい低音でゆっくり繰り返される言葉。
その言葉の意味が、頭のなかにやっと入ってきた。
カアッと一気に頰に、身体に押し寄せる熱。ドクンドクンドクン、と壊れそうに響く鼓動。
「なっ、何、言ってるんですか!? じ、冗談でも言っていいことと、悪いことがっ……」
「本気」
たった一言。瞬時に変わる空気。何よりも破壊力のある言葉を桔梗さんは口にした。
いつもとは違う、真剣な眼差しで。そのひた向きな視線に私は再び言葉を失う。
ただ茫然と吸い込まれるように焦げ茶色の瞳を見つめた。
「え……?」
瞠目する私にフッと妖しく笑う。
「俺を選べよ、藤井」
繰り返される言葉。
「何、を?」
胸の中に浮かび上がる小さな可能性。まさか、と打ち消す。
「俺がお前の彼氏になれば行かなくてすむよな?」
惹き付けられる煌びやかな笑顔で、桔梗さんはとんでもないことを言う。両手を私の顔の横につき、自由を奪ったまま。思考が止まる。目の前には微塵の隙もない上司の笑顔。その長い両腕の間に閉じ込められた私。
今、何て言った? 彼氏?
「……誰が誰の?」
「俺がお前の。彼氏がいるならお見合い会なんて行かなくてすむよな?」
ご丁寧に優しい低音でゆっくり繰り返される言葉。
その言葉の意味が、頭のなかにやっと入ってきた。
カアッと一気に頰に、身体に押し寄せる熱。ドクンドクンドクン、と壊れそうに響く鼓動。
「なっ、何、言ってるんですか!? じ、冗談でも言っていいことと、悪いことがっ……」
「本気」
たった一言。瞬時に変わる空気。何よりも破壊力のある言葉を桔梗さんは口にした。
いつもとは違う、真剣な眼差しで。そのひた向きな視線に私は再び言葉を失う。
ただ茫然と吸い込まれるように焦げ茶色の瞳を見つめた。