好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「嫌だったら拒否して。でも、嫌じゃないなら少しだけでいいから。……抱きしめさせて」
切なさをたたえた目が私を真剣に見つめて、私を射抜く。呼吸がきちんとできているのかすらわからない。
のろのろあげた手は震えたまま空を切る。
拒否して、なんて強気で言うくせに、頼むから、なんてお願いをしないで。そんなズルい言い方をしないで。
拒否したいのかどうかも、もうわからない。
躊躇しているようにゆっくりと背中に骨ばった手が回って、ふわっと大きな胸に包まれた。身体中に満ちる温もりが温かくて、伝わる鼓動が優しくて胸が震えた。
「……小さいな。折れそうで恐い」
桔梗さんの胸の中、そっと言われた言葉が私の鼓膜を震わせた。ビク、と強張った身体から力が抜ける。
伝わる桔梗さんの体温。桔梗さんのスーツの肌ざわり。毎日近くにいても、毎日顔を見ていても知らなかったこと、わからなかったことが、今、わかる。桔梗さんに抱きしめられていることを実感する。桔梗さんの腕の中は驚くほどに心地よくて、益々泣きたくなった。
グッと桔梗さんが私を胸に引き寄せる。
「藤井、好きだ」
その優しすぎる声に胸が詰まる。この気持ちの正体も取り扱い方もわからずに、涙が零れた。
私の反応に過敏な桔梗さんは、私が泣いていることを見逃さない。
切なさをたたえた目が私を真剣に見つめて、私を射抜く。呼吸がきちんとできているのかすらわからない。
のろのろあげた手は震えたまま空を切る。
拒否して、なんて強気で言うくせに、頼むから、なんてお願いをしないで。そんなズルい言い方をしないで。
拒否したいのかどうかも、もうわからない。
躊躇しているようにゆっくりと背中に骨ばった手が回って、ふわっと大きな胸に包まれた。身体中に満ちる温もりが温かくて、伝わる鼓動が優しくて胸が震えた。
「……小さいな。折れそうで恐い」
桔梗さんの胸の中、そっと言われた言葉が私の鼓膜を震わせた。ビク、と強張った身体から力が抜ける。
伝わる桔梗さんの体温。桔梗さんのスーツの肌ざわり。毎日近くにいても、毎日顔を見ていても知らなかったこと、わからなかったことが、今、わかる。桔梗さんに抱きしめられていることを実感する。桔梗さんの腕の中は驚くほどに心地よくて、益々泣きたくなった。
グッと桔梗さんが私を胸に引き寄せる。
「藤井、好きだ」
その優しすぎる声に胸が詰まる。この気持ちの正体も取り扱い方もわからずに、涙が零れた。
私の反応に過敏な桔梗さんは、私が泣いていることを見逃さない。