好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『そのプロジェクトに加入してほしいって言ったよな?』
私は神妙な面持ちで頷く。
『藤井の後輩にあたる事務職の女性は七月に東京から来てもらう。入社四年目で直属の上司は瀬尾だ。営業面と事務面、本部とのやりとりを瀬尾と共に担うため、今回赴任してきたのが桔梗だ。桔梗は本部とのやりとりがメインになるから出張が多くなる。瀬尾が不在のときには桔梗に指示を仰いでほしい。ちなみに瀬尾と桔梗は同期だから』
皆川さんの説明を聞いて改めて桔梗さんを見る。
今回瀬尾さんは異例の出世だと聞いていた、けれど桔梗さんもどうやらそのようだ。同期ということは桔梗さんも恐らく同い年だろう。
今回桔梗さんはチーフの課長として赴任してくる。ふたりの年齢では課長職につくことさえ、我が社では珍しい。それを越える役職に就いているということはふたりは仕事ができる人たちなのだろう。
『藤井の直属の上司は桔梗になるから』
皆川さんの一言に気が重くなった。
『今、露骨に嫌な顔しただろ?』
桔梗さんがすかさず言う。
『してません、驚いただけです!』
真剣に否定する私。
『傷つくなぁ。俺、結構部下から人気あるよ?』
胸に手を当ててわざとらしく悲しそうな表情をする桔梗さん。
『ですから何も思ってません!』
再び強い口調で言う私。
『桔梗、藤井をからかうなって』
皆川さんが呆れたように諭す。
『藤井、忙しい時間帯に悪かった。もう行っていいぞ。五時からミーティングがあるからそれに参加して』
はい、と小さく返事をして応接室をあとにした。背後からクックッと笑う桔梗さんの声が聞こえてきた。
私は神妙な面持ちで頷く。
『藤井の後輩にあたる事務職の女性は七月に東京から来てもらう。入社四年目で直属の上司は瀬尾だ。営業面と事務面、本部とのやりとりを瀬尾と共に担うため、今回赴任してきたのが桔梗だ。桔梗は本部とのやりとりがメインになるから出張が多くなる。瀬尾が不在のときには桔梗に指示を仰いでほしい。ちなみに瀬尾と桔梗は同期だから』
皆川さんの説明を聞いて改めて桔梗さんを見る。
今回瀬尾さんは異例の出世だと聞いていた、けれど桔梗さんもどうやらそのようだ。同期ということは桔梗さんも恐らく同い年だろう。
今回桔梗さんはチーフの課長として赴任してくる。ふたりの年齢では課長職につくことさえ、我が社では珍しい。それを越える役職に就いているということはふたりは仕事ができる人たちなのだろう。
『藤井の直属の上司は桔梗になるから』
皆川さんの一言に気が重くなった。
『今、露骨に嫌な顔しただろ?』
桔梗さんがすかさず言う。
『してません、驚いただけです!』
真剣に否定する私。
『傷つくなぁ。俺、結構部下から人気あるよ?』
胸に手を当ててわざとらしく悲しそうな表情をする桔梗さん。
『ですから何も思ってません!』
再び強い口調で言う私。
『桔梗、藤井をからかうなって』
皆川さんが呆れたように諭す。
『藤井、忙しい時間帯に悪かった。もう行っていいぞ。五時からミーティングがあるからそれに参加して』
はい、と小さく返事をして応接室をあとにした。背後からクックッと笑う桔梗さんの声が聞こえてきた。