好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「今日から俺はお前の彼氏だから」
返事をしていないのに、桔梗さんはあっさりと決めてしまう。だけどそれが嫌ではない。
心臓は壊れそうなくらいに速いリズムを刻んでいるし、頰だってずっと熱をもっている。
「お前は俺に甘やかされる覚悟をしろよ?」
とどめの一言を甘く囁いて、桔梗さんは私の唇に触れるだけの優しいキスをした。
トクン……!
一際跳ねた鼓動が桔梗さんに聞こえたかわからない。
唇を離した桔梗さんは蕩けそうに優しい笑みを浮かべて私の髪にそっとキスをする。
「お前の髪が好き。お前の瞳が好き。……お前の全部が好きだ」
まるで物語を読むように言葉を紡ぐ桔梗さんに、どうしてよいかわからずに固まってしまう。
そんなに好き、を言われたことなんてない。
こんなに大切に抱きしめられたことなんてない。
こんなに優しいキスをされたことなんてない。
経験値が違いすぎて既にパニックだ。
「……き、桔梗さんってか、彼女いないんですか?」
やっと口にできた言葉は驚く程、場に不似合いな言葉だった。桔梗さんは私を抱きしめたまま、キョトン、としてブハッと噴き出す。
「今、それ聞く!? 俺、告白したのに? やばい、俺、まじで藤井が好きだわ」
彼氏になった上司の爆笑を私は居たたまれない気持ちで見つめる。
「す、すみません、私……!」
穴があったら入りたい!
これじゃ、私は浮気相手ですかって聞いてるようなものだ。そんなこと、思ってないのに、どうして私は肝心な時に上手く言葉にできないんだろう。激しく自己嫌悪に陥って泣きそうだ。
そんな私に、ひとしきり笑った桔梗さんは明るく言う。
返事をしていないのに、桔梗さんはあっさりと決めてしまう。だけどそれが嫌ではない。
心臓は壊れそうなくらいに速いリズムを刻んでいるし、頰だってずっと熱をもっている。
「お前は俺に甘やかされる覚悟をしろよ?」
とどめの一言を甘く囁いて、桔梗さんは私の唇に触れるだけの優しいキスをした。
トクン……!
一際跳ねた鼓動が桔梗さんに聞こえたかわからない。
唇を離した桔梗さんは蕩けそうに優しい笑みを浮かべて私の髪にそっとキスをする。
「お前の髪が好き。お前の瞳が好き。……お前の全部が好きだ」
まるで物語を読むように言葉を紡ぐ桔梗さんに、どうしてよいかわからずに固まってしまう。
そんなに好き、を言われたことなんてない。
こんなに大切に抱きしめられたことなんてない。
こんなに優しいキスをされたことなんてない。
経験値が違いすぎて既にパニックだ。
「……き、桔梗さんってか、彼女いないんですか?」
やっと口にできた言葉は驚く程、場に不似合いな言葉だった。桔梗さんは私を抱きしめたまま、キョトン、としてブハッと噴き出す。
「今、それ聞く!? 俺、告白したのに? やばい、俺、まじで藤井が好きだわ」
彼氏になった上司の爆笑を私は居たたまれない気持ちで見つめる。
「す、すみません、私……!」
穴があったら入りたい!
これじゃ、私は浮気相手ですかって聞いてるようなものだ。そんなこと、思ってないのに、どうして私は肝心な時に上手く言葉にできないんだろう。激しく自己嫌悪に陥って泣きそうだ。
そんな私に、ひとしきり笑った桔梗さんは明るく言う。