好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
少なからず変わったことといえば、どんなに忙しい時も、朝と夜に桔梗さんはメッセージや電話のどちらかを欠かさずにしてくれていた。
電話の時には、自分の話よりも私の話を聞きたがってくれる。私が今日一日をどう過ごしたのか、何を考え、思ったのか。
仕事のこと、友達のこと、読んだ本やドラマのことといった他愛ない話をきちんと丁寧に聞いてくれる。
ううん、違う。“私”を知ろうとしてくれる。桔梗さんの言葉の端々にそのことを感じる。
『へえ、藤井はそう思うんだ』
嬉しそうにスマートフォンから届いた声。通勤時に読んだ本のあらすじ、読み終えた感想を言った時、桔梗さんは嬉しそうにそう言った。その反応を不思議がる私に、桔梗さんが答えてくれた。
『俺が知らなかった藤井を知れたから』
言われた直後は特に何とも思っていなかった。ただそれから何度となくそんな反応をする桔梗さんの姿に、この人は本当に私を理解しようとしてくれているんだな、と思った。
ほかには、毎朝桔梗さんがくれるカイロ。渡してくれる瞬間に、ほんの少しだけ指先をいたずらに絡ませてくる。触れるその一瞬、私の身体は熱をもち、心臓がピクンと跳ねる。そんな私の反応を楽しむように、いたずらな上司は甘い笑みを浮かべる。私たちふたりの小さな秘密の日課。
毎日のことなのに、いまだに慣れない。
電話の時には、自分の話よりも私の話を聞きたがってくれる。私が今日一日をどう過ごしたのか、何を考え、思ったのか。
仕事のこと、友達のこと、読んだ本やドラマのことといった他愛ない話をきちんと丁寧に聞いてくれる。
ううん、違う。“私”を知ろうとしてくれる。桔梗さんの言葉の端々にそのことを感じる。
『へえ、藤井はそう思うんだ』
嬉しそうにスマートフォンから届いた声。通勤時に読んだ本のあらすじ、読み終えた感想を言った時、桔梗さんは嬉しそうにそう言った。その反応を不思議がる私に、桔梗さんが答えてくれた。
『俺が知らなかった藤井を知れたから』
言われた直後は特に何とも思っていなかった。ただそれから何度となくそんな反応をする桔梗さんの姿に、この人は本当に私を理解しようとしてくれているんだな、と思った。
ほかには、毎朝桔梗さんがくれるカイロ。渡してくれる瞬間に、ほんの少しだけ指先をいたずらに絡ませてくる。触れるその一瞬、私の身体は熱をもち、心臓がピクンと跳ねる。そんな私の反応を楽しむように、いたずらな上司は甘い笑みを浮かべる。私たちふたりの小さな秘密の日課。
毎日のことなのに、いまだに慣れない。