好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「ねえ、何がどうなってそうなるの?」
桔梗さんが東京出張で不在の土曜日。
私は菜々とクリスマスムードあふれる札幌駅周辺にいた。皮肉なことに朝から降りだした雪が、ホワイトクリスマスを演出している。今年は暖かかったせいか、なかなか根雪にならず先週くらいにやっと根雪になった。私としては根雪になるのが遅いほうが歩きやすくて助かるのだけれど。とはいえ、札幌駅、大通駅周辺は除雪が行き届いているので余程急激に雪が降り続いたりしない限りは雪に足を取られて歩けないということはあまりない。
菜々は今日、仕事が休みだった。私とは違い、土日祝が繁忙期の菜々が土曜日に休みなのは珍しい。菜々は結局お見合い会には行かなかった。元々、私に恋をさせることが目的だったからと言われた。
あの桔梗さんに遭遇したランチの翌日。
私は菜々に桔梗さんと付き合うことになったことを電話で報告した。菜々は驚愕して根掘り葉掘り、追及してきた。見るからに女慣れしてそうな桔梗さんに、私が遊ばれ騙されているのではないか心配だったらしい。
私の話を一通り聞き終えた後は、余計に桔梗さんが私を好きだと言ってくれたことが、信じれられないようだったけれど。それはそれでどうなの、と思うところだ。
「何その会話。忘れ物はないですかって莉歩、母親じゃないんだし。付き合いたてなら、照れるとか初々しさを感じるような、もっと可愛い言い方ができないの?」
桔梗さんとの会話を報告している私に菜々の言葉が胸に刺さる。自分でも気にしていた部分を指摘され、ぐうの音もでない。
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