好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「今、久しぶりに彼氏がいない私が言うのもなんだけど。クリスマスに彼氏がいる女子なら彼氏に会いたいものじゃないの?」
前半は小さな自慢のようにも聞こえるけれど、菜々は歩きながら横に並ぶ私をちらっと見る。
「残念だなって思ったよ?」
「その気持ち、桔梗さんに言った? そもそも寂しくないの?」
ギュッとバッグの持ち手を強く握る私。
「……寂しいって少し、思った。でも残念だとかそういう自分の気持ちは伝えてない」
菜々は呆れたように自身の額に手袋をはめた手を当てた。
「何で言わないのよ?」
「仕事だし、言ったって仕方ないことだし。言われても困るでしょ? 桔梗さん、仕事は真剣に取り組んでる人だし、迷惑かけたくないもの」
ちらっと菜々の顔を見ながら伝える。
「ちょっと待って、莉歩。桔梗さんは超能力者じゃないのよ? 言われなきゃわからないことなんていっぱいあるの。ましてや付き合って間もない彼女に、そんなに見事に物わかり良く送り出されたらどう思う?」
菜々がまるで教師のような口調で私を問いただす。
「どう思う?」
本気で尋ねる。
「何でそこが疑問形なのよ! 相手が自分を好きなのか自信をなくすって思わないの? しかも莉歩、自分の気持ちも伝えてないんでしょ?」
私は小さく頷く。
桔梗さんと付き合うようになって半月程経っているけれど、私は自分の気持ちを桔梗さんに伝えていない。
『俺を好きになったら告白して』桔梗さんはそう言ったけれど。情けないくらいに自分の気持ちがはっきりと見えていない。
「莉歩の話を聞いている限り、桔梗さんはすごく莉歩を大事にしてくれていると思う。そんなに心を傾けている相手に気持ちを返してもらえないって辛いと思うよ」
前半は小さな自慢のようにも聞こえるけれど、菜々は歩きながら横に並ぶ私をちらっと見る。
「残念だなって思ったよ?」
「その気持ち、桔梗さんに言った? そもそも寂しくないの?」
ギュッとバッグの持ち手を強く握る私。
「……寂しいって少し、思った。でも残念だとかそういう自分の気持ちは伝えてない」
菜々は呆れたように自身の額に手袋をはめた手を当てた。
「何で言わないのよ?」
「仕事だし、言ったって仕方ないことだし。言われても困るでしょ? 桔梗さん、仕事は真剣に取り組んでる人だし、迷惑かけたくないもの」
ちらっと菜々の顔を見ながら伝える。
「ちょっと待って、莉歩。桔梗さんは超能力者じゃないのよ? 言われなきゃわからないことなんていっぱいあるの。ましてや付き合って間もない彼女に、そんなに見事に物わかり良く送り出されたらどう思う?」
菜々がまるで教師のような口調で私を問いただす。
「どう思う?」
本気で尋ねる。
「何でそこが疑問形なのよ! 相手が自分を好きなのか自信をなくすって思わないの? しかも莉歩、自分の気持ちも伝えてないんでしょ?」
私は小さく頷く。
桔梗さんと付き合うようになって半月程経っているけれど、私は自分の気持ちを桔梗さんに伝えていない。
『俺を好きになったら告白して』桔梗さんはそう言ったけれど。情けないくらいに自分の気持ちがはっきりと見えていない。
「莉歩の話を聞いている限り、桔梗さんはすごく莉歩を大事にしてくれていると思う。そんなに心を傾けている相手に気持ちを返してもらえないって辛いと思うよ」