好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
桔梗さんの体温を感じながら伝える。
「クリスマス、帰れなくてごめんな」
私の背中に腕をまわした桔梗さんが呟く。桔梗さんの胸の中で私はフルフルと首を横に振る。
「帰ってきてくれてありがとうございます」
心からそう思う。
「藤井」
呼ばれて、顔を上げる。
桔梗さんの長い睫毛がゆっくり伏せられる。ふわっ、と唇に触れる冷たくて柔らかな感触。ほんの一瞬。重なった唇に私の鼓動がトクン、と波打った。チョコレート色の綺麗な瞳が真っ直ぐ私を見つめる。端正な顔立ちに浮かぶ微笑みに胸がキュウッと締めつけられた。
さらりと私の髪をすく大きな手が優しくて、その手に頰をすり寄せたい衝動にかられる。
桔梗さんの手が好き。温かくて大きな骨ばった男性の手。何だろう、ただ髪を撫でてもらっているだけなのに。胸の中が温かいもので満たされて、涙が滲みそうになる。
「……会いたかった」
桔梗さんが呟いた言葉に頷いた私は慌ててぱっと離れた。
「あっ、あのっ。すみません、こんな場所で。よかったら上がってくださいっ」
桔梗さんはほんの少し苦笑した。
「魅力的なお誘いだけど、今日はやめとく。今は俺も疲れてるし、夜も遅いし、理性を保てる自信がないから。お前に会いたかったのと、これ渡したかったからさ」
手にしていた紙袋を掲げて、桔梗さんは私の頰に形の良い唇を近づけてキスをした。
「そのお誘いは保留にしてて」
色香を含んだ妖艶な眼差しで私を射抜く桔梗さん。
「俺の部屋にも連れていきたいし。むしろもう、そこから出したくないかな」
色気たっぷりに耳元で囁かれて、私の顔がボボッと赤く染まる。
「えっ? へっ、あのっ……は、い?」
返事らしい返事もできない私を見て、桔梗さんは楽しそうに口角を上げる。
手首にかけられた水色の小さな紙袋。
「クリスマス、帰れなくてごめんな」
私の背中に腕をまわした桔梗さんが呟く。桔梗さんの胸の中で私はフルフルと首を横に振る。
「帰ってきてくれてありがとうございます」
心からそう思う。
「藤井」
呼ばれて、顔を上げる。
桔梗さんの長い睫毛がゆっくり伏せられる。ふわっ、と唇に触れる冷たくて柔らかな感触。ほんの一瞬。重なった唇に私の鼓動がトクン、と波打った。チョコレート色の綺麗な瞳が真っ直ぐ私を見つめる。端正な顔立ちに浮かぶ微笑みに胸がキュウッと締めつけられた。
さらりと私の髪をすく大きな手が優しくて、その手に頰をすり寄せたい衝動にかられる。
桔梗さんの手が好き。温かくて大きな骨ばった男性の手。何だろう、ただ髪を撫でてもらっているだけなのに。胸の中が温かいもので満たされて、涙が滲みそうになる。
「……会いたかった」
桔梗さんが呟いた言葉に頷いた私は慌ててぱっと離れた。
「あっ、あのっ。すみません、こんな場所で。よかったら上がってくださいっ」
桔梗さんはほんの少し苦笑した。
「魅力的なお誘いだけど、今日はやめとく。今は俺も疲れてるし、夜も遅いし、理性を保てる自信がないから。お前に会いたかったのと、これ渡したかったからさ」
手にしていた紙袋を掲げて、桔梗さんは私の頰に形の良い唇を近づけてキスをした。
「そのお誘いは保留にしてて」
色香を含んだ妖艶な眼差しで私を射抜く桔梗さん。
「俺の部屋にも連れていきたいし。むしろもう、そこから出したくないかな」
色気たっぷりに耳元で囁かれて、私の顔がボボッと赤く染まる。
「えっ? へっ、あのっ……は、い?」
返事らしい返事もできない私を見て、桔梗さんは楽しそうに口角を上げる。
手首にかけられた水色の小さな紙袋。