好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
『藤井と話がしたいと思ってさ。俺、直属の上司になるわけだし。藤井のことをよく知りたいんだ』
まるで彼氏が彼女に言うような台詞を、真面目に照れもせずに口にする桔梗さん。隣同士に座っているため、真っ直ぐな眼差しから逃げられない。
私の席の真向かいのブラインドの隙間からは夕暮れのオレンジの光がぼんやり見える。
『じ、上司ってそんな、何もお話しなくても、人事資料に……』
しどろもどろになって話す私は若干体を後ろにひく。
『一通りは読んだけど、あんなの見てもよくわかんないだろ? 藤井、この髪は地毛?』
私の薄茶色の髪を指差して桔梗さんが尋ねた。
『あ、はい』
耳の下くらいまでの短いボブヘアの髪に無意識に触れる私。
『そっか、瞳も薄茶色だもんな。色も白いし。すげえ綺麗だなって、今朝、思ったんだ』
『なっ!』
悪びれもせず、さらりと口にする桔梗さんに、私の顔がボッと赤く染まった。
ちょっと待って……! 上司でしょ、何でそんなこと言うの? 私、今まで誰にもそれが綺麗だなんて言われたことないのにっ……!
意思に反してドクンドクンと鼓動が速いリズムを刻む。
『あ、赤くなった。藤井、肌の色が白いからすぐわかるな』
……言葉がでない。
パクパクと口を動かす。こんな軽そうな美形は苦手なのに。こんな美辞麗句、聞き流せばいいだけなのに。
至近距離に迫った凄艶な顔立ちから目が離せなくなる。思わず俯いてさらりと落ちた髪にふわ、と微かに触れる感触。見上げると揺れる焦げ茶色の綺麗な瞳があった。まるで何もかも見透かすような真っ直ぐな目。
男の人なのにどうしてこんなに綺麗なんだろう。私の髪にそっと触れる長い指。その本心はわからない。
『……お前、絶対に俺以外の部下になるなよ』
吐息が髪を掠める。耳元で囁かれた低い声に肩がビクッと跳ねた。
まるで彼氏が彼女に言うような台詞を、真面目に照れもせずに口にする桔梗さん。隣同士に座っているため、真っ直ぐな眼差しから逃げられない。
私の席の真向かいのブラインドの隙間からは夕暮れのオレンジの光がぼんやり見える。
『じ、上司ってそんな、何もお話しなくても、人事資料に……』
しどろもどろになって話す私は若干体を後ろにひく。
『一通りは読んだけど、あんなの見てもよくわかんないだろ? 藤井、この髪は地毛?』
私の薄茶色の髪を指差して桔梗さんが尋ねた。
『あ、はい』
耳の下くらいまでの短いボブヘアの髪に無意識に触れる私。
『そっか、瞳も薄茶色だもんな。色も白いし。すげえ綺麗だなって、今朝、思ったんだ』
『なっ!』
悪びれもせず、さらりと口にする桔梗さんに、私の顔がボッと赤く染まった。
ちょっと待って……! 上司でしょ、何でそんなこと言うの? 私、今まで誰にもそれが綺麗だなんて言われたことないのにっ……!
意思に反してドクンドクンと鼓動が速いリズムを刻む。
『あ、赤くなった。藤井、肌の色が白いからすぐわかるな』
……言葉がでない。
パクパクと口を動かす。こんな軽そうな美形は苦手なのに。こんな美辞麗句、聞き流せばいいだけなのに。
至近距離に迫った凄艶な顔立ちから目が離せなくなる。思わず俯いてさらりと落ちた髪にふわ、と微かに触れる感触。見上げると揺れる焦げ茶色の綺麗な瞳があった。まるで何もかも見透かすような真っ直ぐな目。
男の人なのにどうしてこんなに綺麗なんだろう。私の髪にそっと触れる長い指。その本心はわからない。
『……お前、絶対に俺以外の部下になるなよ』
吐息が髪を掠める。耳元で囁かれた低い声に肩がビクッと跳ねた。