好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
「重いって何? 彼女からのバレンタインチョコなのよ、重くて当然でしょ?」
分厚いパンケーキにチョコクリームをたっぷりつけながら菜々が言う。
「軽く、消費できるものにしたいの。だからチョコだけあげたい」
たどたどしく話す私を、菜々が何か言いたげに口をすぼめる。
「消費って何? 残るものが嫌だとかそういうこと?」
沈黙は肯定。
菜々はふう、と重い溜め息をついてカチャン、とフォークとナイフをお皿に置く。圧倒的に女性客が多い華やかな店内なのに、私の席だけとても空気が重たい。
「ねぇ、この間の電話の時も言ったけど莉歩、誤解してない? 桔梗さんはそんなつもりで莉歩と付き合っているわけじゃないと思うわよ? 一時期付き合うだけの関係に同じ店内の女の子を選ぶ? 後腐れすごいし、そんな面倒なことしないわよ。しかもそんなに高価なプレゼント贈らないわ」
菜々の言うことは尤もだ。私も幾度となくそのことは考えた。だけど過度に期待したくない。期待が外れた時の喪失感に耐えられない。
「莉歩が恋愛に自信がないことはわかっている。いつも望むような結果にはなってこなかったことも傷付いてきたことも知っているけれど、でも……」
言い淀む菜々にかぶりを振って、私はホイップクリームを口にする。私の心中とは違って甘い味に、切なくなった。
分厚いパンケーキにチョコクリームをたっぷりつけながら菜々が言う。
「軽く、消費できるものにしたいの。だからチョコだけあげたい」
たどたどしく話す私を、菜々が何か言いたげに口をすぼめる。
「消費って何? 残るものが嫌だとかそういうこと?」
沈黙は肯定。
菜々はふう、と重い溜め息をついてカチャン、とフォークとナイフをお皿に置く。圧倒的に女性客が多い華やかな店内なのに、私の席だけとても空気が重たい。
「ねぇ、この間の電話の時も言ったけど莉歩、誤解してない? 桔梗さんはそんなつもりで莉歩と付き合っているわけじゃないと思うわよ? 一時期付き合うだけの関係に同じ店内の女の子を選ぶ? 後腐れすごいし、そんな面倒なことしないわよ。しかもそんなに高価なプレゼント贈らないわ」
菜々の言うことは尤もだ。私も幾度となくそのことは考えた。だけど過度に期待したくない。期待が外れた時の喪失感に耐えられない。
「莉歩が恋愛に自信がないことはわかっている。いつも望むような結果にはなってこなかったことも傷付いてきたことも知っているけれど、でも……」
言い淀む菜々にかぶりを振って、私はホイップクリームを口にする。私の心中とは違って甘い味に、切なくなった。