好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
コンッ。
『人に出張行かせて、藤井を口説くなよ』
開け放たれたドアをノックする音と、溜め息混じりの呆れた声が降ってきた。
『よお、潤。早いな』
『早くない、そもそもお前の用事で営業推進部に寄らなければもっと早く帰れたんだよ!
何、藤井に手を出してるんだよ』
王子様のように綺麗な顔に冷たい表情を張り付けて、瀬尾さんが桔梗さんを睨む。その視線は鋭い。瀬尾さんの言葉に頭を桔梗さんに引き寄せられたままなことに気づく。
『う、うわぁぁっ!』
桔梗さんの手をバッと振り払う。我ながら色気も何もない叫び声。
恥ずかしい、恥ずかしい! 仕事中に! しかもせ、瀬尾さんに見られた! 穴があったら入りたいっ!
カアッと全身が真っ赤に火照る。瀬尾さんの怜悧な睨みに動じることなく、桔梗さんは妖艶な笑みを浮かべた。
『潤、タイミング悪すぎ。まだ出してねぇよ』
『そういう問題じゃない。悪かったな、藤井、大丈夫か?』
気遣わし気な瀬尾さんの声に私はブンブンと首を縦に振る。
『コイツが嫌なら俺が藤井の上司になるから、いつでも言えよ』
思わず頷こうとした私より早く桔梗さんが反応した。
『何でだよ! 藤井は俺の部下だ!』
なぜそこでその主張をするのかわからない。
『じゃあ、場所と状況と藤井の気持ちをを弁えろ』
立ったまま桔梗さんを見おろして、冷静に瀬尾さんが言い返す。
『弁えてる!』
なぜか私は置いてきぼりでふたりはぎゃあぎゃあと言い合いをし出す。ふたりの遠慮のない姿に茫然とする。
『おいおい、お前ら何を盛り上がってるんだ?』
皆川さんがやって来るまでふたりの言い合いは続いていた。
『人に出張行かせて、藤井を口説くなよ』
開け放たれたドアをノックする音と、溜め息混じりの呆れた声が降ってきた。
『よお、潤。早いな』
『早くない、そもそもお前の用事で営業推進部に寄らなければもっと早く帰れたんだよ!
何、藤井に手を出してるんだよ』
王子様のように綺麗な顔に冷たい表情を張り付けて、瀬尾さんが桔梗さんを睨む。その視線は鋭い。瀬尾さんの言葉に頭を桔梗さんに引き寄せられたままなことに気づく。
『う、うわぁぁっ!』
桔梗さんの手をバッと振り払う。我ながら色気も何もない叫び声。
恥ずかしい、恥ずかしい! 仕事中に! しかもせ、瀬尾さんに見られた! 穴があったら入りたいっ!
カアッと全身が真っ赤に火照る。瀬尾さんの怜悧な睨みに動じることなく、桔梗さんは妖艶な笑みを浮かべた。
『潤、タイミング悪すぎ。まだ出してねぇよ』
『そういう問題じゃない。悪かったな、藤井、大丈夫か?』
気遣わし気な瀬尾さんの声に私はブンブンと首を縦に振る。
『コイツが嫌なら俺が藤井の上司になるから、いつでも言えよ』
思わず頷こうとした私より早く桔梗さんが反応した。
『何でだよ! 藤井は俺の部下だ!』
なぜそこでその主張をするのかわからない。
『じゃあ、場所と状況と藤井の気持ちをを弁えろ』
立ったまま桔梗さんを見おろして、冷静に瀬尾さんが言い返す。
『弁えてる!』
なぜか私は置いてきぼりでふたりはぎゃあぎゃあと言い合いをし出す。ふたりの遠慮のない姿に茫然とする。
『おいおい、お前ら何を盛り上がってるんだ?』
皆川さんがやって来るまでふたりの言い合いは続いていた。