好きな人は策士な上司(『好きな人はご近所上司』スピンオフ)
幸か不幸か会議室でふたりになって以来、桔梗さんとはゆっくり顔を見て話していない。桔梗さんの仕事が立て込んでいるせいもある。秘書でもお世話係でもないけれど、直属の上司のスケジュールは悲しいことに把握している。
今の桔梗さんは休日もままならない日が続いていて体調が心配だ。見かねた峰岸さんが桔梗さんの仕事について「皆川さんと相談してくる」と言ってくれた。
桔梗さんと過ごす時間が長くなればなるほど、私は自分の気持ちを誤魔化す自信がない。
離れる覚悟を、なんて言っておきながら、そんな覚悟は一切できていない。
電話もメッセージも待ってしまう私がいて。ピアスを毎日つけてしまう私がいて。日増しに桔梗さんを好きになってしまう私がいる。
たったひとりの人を想って、眠れなくなるくらいに恋しい気持ちなんて知らなかった。好き、という言葉を伝えることがこんなにも難しいなんて、こんなにも恐いなんて知らなかった。
私が、私自身がこんなにも臆病な人間だったなんて知らなかった。
自分以外の誰かをこんなにも大切に想う気持ちなんて知らなかった。
膨れ上がっていく想いは出口をもたないまま、私の心の中を駆け巡って私の気持ちを乱していく。
今の桔梗さんは休日もままならない日が続いていて体調が心配だ。見かねた峰岸さんが桔梗さんの仕事について「皆川さんと相談してくる」と言ってくれた。
桔梗さんと過ごす時間が長くなればなるほど、私は自分の気持ちを誤魔化す自信がない。
離れる覚悟を、なんて言っておきながら、そんな覚悟は一切できていない。
電話もメッセージも待ってしまう私がいて。ピアスを毎日つけてしまう私がいて。日増しに桔梗さんを好きになってしまう私がいる。
たったひとりの人を想って、眠れなくなるくらいに恋しい気持ちなんて知らなかった。好き、という言葉を伝えることがこんなにも難しいなんて、こんなにも恐いなんて知らなかった。
私が、私自身がこんなにも臆病な人間だったなんて知らなかった。
自分以外の誰かをこんなにも大切に想う気持ちなんて知らなかった。
膨れ上がっていく想いは出口をもたないまま、私の心の中を駆け巡って私の気持ちを乱していく。