私の最後の夏の思い出
「瑞樹くんといたら、もっといろんな自分が見つかる気がする。」
 声に出して言うと、とても恥ずかしくて、声にならない叫びをあげてしまいそうになる。何回か深呼吸をすると、やっと心が落ち着いてきた。最後に私が締めくくりとして日記に書いた言葉…一目惚れ。その言葉を実際書き出して見ると、想像以上に恥ずかしくなった。うわぁ、と思わず声が漏れて、誰にも見せられないな、と思った。ひとしきり盛り上がったところで、ふと心に影がさす。叶わない恋だとわかった。仮に両思いでも、私は死んじゃうんだから、付き合えない。そう考えると、不思議と心が軽くなった。これだったら片想いでも傷つかない。隣の部屋から夜ご飯だよ、と呼ぶ声が聞こえた。今行くと答えてから日記をカバンにしまう。
「この気持ちは、私の心だけにとどめておこう。」
 そう口に出すと、不意に涙が出そうになってしまって、急いで考えを頭から追い出して食卓へ向かった。
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